吉本新喜劇を超えた民主劇場 しかし観客は泣いている        2011.3.6   



 いまどき一番面白いTV番組は何かと問われたら「国会中継」と答えるでしょう。3/4の参議院予算委員会の中継は出色でした。


 テレビの電源を入れると、山本一太氏(自民)が韓国によって竹島が法的根拠のないまま占拠されている現状について、民主党政権から「不法占拠」という言葉を引き出そうと質問しているところでした。外務省のホームページには、「韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠である」と明確に書かれていますが、その外務省を指揮する前原誠二外務大臣は「法的根拠がないまま占拠された状態にある」と繰り返すばかりで「不法占拠」という言葉を使うのを頑なに拒みました。菅首相も「外務大臣に同じ・・」を繰り返すばかりで、枝野官房長官にいたっては、自民党政権から「不法占拠」は使わないという引継ぎをしていると言い出す始末です。昨年3月の衆議院外務委員会で、新藤義孝氏(自民)の「不法占拠されているのか」の質問に対して、岡田克也前外務大臣は「不法占拠」という言葉は使わずに、ひたすら「竹島は日本の領土、しかし今実効支配するに至っていない」と答え続けましたが、これは、これでレトリック的には筋が通っているように思います。しかし、「法的根拠がないまま占拠されている」とまで言っておきながら「不法占拠」とは絶対に言えないというのは、滑稽としかいいようがありません。韓国政府との間に「不法占拠」という単語だけは使いませんという密約でも存在するのでしょうか?

次に質問に立った林芳正氏(自民)は、菅政権と民主党が一顧だにしなかった予算組み替えに関する自民党案を示して、先の党首討論で「丸呑みできる組み替え案を出して欲しいと言っておきながら、自民党側の説明も聞かないのは何故か」とただすと、菅首相は何と「我々はベストの予算案を出したから」とうそぶきました。組み替え案はバラマキ政策の4Kを全面否定する内容で、菅政権が拒否するのを前提に自民党側が意図的にぶつけたものでしょうから、民主党政権が受け入れないのは当然かも知れませんが、「ベストの案を出した」の言葉には爆笑しました。菅政権は予算が執行できないことによる国民生活への影響がマスコミでも大きく取り上げられているこの期に及んでも予算案の見直しを執拗に拒んでいます。予算編成で菅政権が固執した民主党のマニフェストは財政的に破綻しており、国民の多くはバラマキ政策を支持していないわけですから、野党からの代案を待つまでもなく自ら予算案の見直しを行うのがあたりまえのことです。林芳正氏は自らが尊敬する高橋是清翁の逸話を持ち出して、菅首相の不甲斐なさを責めましたが、高橋是清、小村寿太郎、児玉源太郎・・など多くの才能を輩出したあの日本はいったいどこに消えてしまったのでしょう。

国民年金の3号から1号への切り替えを怠った主婦に対する厚労省の救済措置は、年金の支払いを含めて手続きが一時停止となり、2/25のこのコラムで、この救済措置によって既に認定を受けている2000人を超える人たちをどう扱うのかを監視する必要があると書きましたが、その後の状況が世耕弘成氏(自民)の質問で明らかになりました。この救済措置で救われた人たちに対する年金支給も含めて事務処理を停止すると明言していた細川律夫厚労大臣は前言を翻して、既に認定を受けた2331人のうち年金の支払い手続きを進めていた493人については、「もう止められないので3/15までに年金を支給する」と言い出しました。とんでもない約束違反で、絶対に許すことはできません。その後の世耕議員の質問に対する細川大臣の回答は、報道のとおり厚生行政の惨憺たる実態を示すものでした。


 極めつけは、西田昌司氏(自民)の質問で明らかになった前原誠二外務大臣の在日韓国人からの政治献金問題です。本人は「献金した人物を中学時代から知っているが、献金を受けていることは知らなかった」と述べていますが、外国人からの政治献金の受領は重大な御法度であることは、事務方が当然に知っていなければならないことですから、前原外務大臣の責任は免れないと思います。前原氏は親米派で、中国に対しても強硬姿勢をとることが多く、保守派の政治家とみられていますが、何故か「外国人地方参政権法案」には賛成の立場です。衆議院の予算委員会では、稲田朋美議員(自民)から国会の会期中に北朝鮮を訪問し、しかも「よど号」のハイジャック犯と面会した不自然さを詰問されていましたが、今回の事件で朝鮮半島と特別なコネクションを持つ政治家であることが公になり、前述の「何故か・・」の裏が分かってきたように思えます。竹島問題で「不法占拠」と言えない背景も見えてきました。こんな人物が外務大臣では、拉致被害者の家族の皆さんも不安でたまらないと思います。私はこの前原氏に将来のリーダとして微かな期待を持っていたのですが、尖閣事件で、次々に発する世間受けの良い威勢のいい言葉とは裏腹に、相手から強硬に反発されると萎縮してしまうこの人物の「軽さ」に危うさを感じました。今回の事件で、さらに永田偽メール事件での対応と共通する軽率さを持った政治家であることがはっきりしました。首相の後継者の一番手がこれで消えてしまったのですから、党内での政権のたらい回しは無理でしょう。速やかに衆議院を解散すべきです。


 見所満載の国会中継。菅首相や執行部のトンチンカンな回答に大爆笑する一方で、この不甲斐ない政権が日本の政治を担っていると思うと底知れないほど哀しくなります。



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