不条理に満ち溢れた政権                                  2011.2.25   



 2/19付のコラム「こんな不公平は断じて許せない」で記事にした国民年金3号被保険者の切り替え漏れに対する不条理な救済措置は、2/22付の読売新聞社説でも批判され、2/24になって、漸く細川厚労大臣から救済措置留保の方針が発表され、日本年金機構は同日、全国の年金事務所に救済の認定作業や関連する年金の支払いの手続きを一時的に停止するよう通知しました。しかし、この救済措置は既に2000人以上に適用されてしまっていますから、今後、混乱が生じるのは必至です。民主党政権が、どのように決着をつけるのか、しっかり監視していかなければなりません。



 民主党は、2009年8月の衆議院議員総選挙で「民主党 政権公約 Manifesto(マニフェスト) 2009年8月18日」を掲げて大勝し、54年間続いた自民党による衆議院の第一党の座を奪いました。私は、家族共々、この民主党の勝利には微塵の貢献もしていませんが・・、普段は特定の支持政党を持たずに、この選挙に限って民主党に投票して、民主党による歴史的大勝をもたらす原動力となった有権者の皆さんの多くは、自民党による長期支配に嫌気して、民主党が掲げるマニフェストの中味を検証することも無く、軽い気持ちで政権交代を選択したのだろうと想像します。

幹部にイギリスかぶれが多い民主党は、2003年の衆議院選挙で他党に先駆けてマニフェストの作成を宣言し、以降の国政選挙では、マニフェストを政権公約として掲げて選挙に臨んできています。前述のように有権者がマニフェストの内容を十分に吟味しないまま投票したという事情があったとしても、それがマニフェストを反故にしてよい理由には到底なりません。

2009年の衆議院選挙の民主党マニフェストは、福山哲郎、大塚耕平、細野豪志など少数の若手のメンバーによって極めて短期間に作成されたと言われています。その政策の柱は8つあり、そのうちの5つは、世間で選挙目当てのバラマキ政策と揶揄されている @子ども手当て A高校授業料無償化 B農業の戸別所得補償 Cガソリン税などの暫定税率の廃止 D高速道路無料化 であり、残り3つは、検討の取り纏め担当を旧政権の与謝野馨に投げ渡してしまった E年金制度改革 と、民主党政権下で改善されるどころか益々、問題が深刻化している F医療・介護の再生 と G雇用対策 です。改めて読み直すと大衆迎合政策オンパレードで、とんでもないマニフェストだったことがわかります。マニフェストはさらに続けます。@〜Dの財源を生み出すために、ムダづかいと不要不急な事業を根絶して9.1兆円、埋蔵金から5兆円、税制の見直しで2.7兆円、合わせて16.8兆円を捻出するとあります。そしてムダつかいを無くすための政策として天下りのあっせんの禁止、国家公務員の総人件費の2割削減、衆議院の比例代表定数の80削減、企業団体による献金の禁止などをあげています。

政権が誕生して1年半、民主党が初めて本格的に取り組んだ国家予算(平成23年度予算)の編成でバラマキ政策の破綻が明らかになりました。事業仕分けは目標額にはるかに及ばず、手をつけてはいけない剰余金まで埋蔵金として拠出させても財源は確保できず、赤字国債を発行して埋め合わせをしなければならない状況に至りました。目玉政策の「子ども手当て」では、「子どもたちに借金を背負わせてまで、子ども手当てはいらない」、「保育所の待機児童を減らすほうが先だ」などという主婦層からの切実な声に押されて、菅首相は9月までの見直しを表明し、事実上マニフェストの破綻を認めました。高速道路無料化では、旧政権が10年分の深夜割引用にプールしていた2兆円を2年間で使い尽くして平日上限2000円制を導入して高速道路無料化の辻褄合わせをすることにしたものの、岡田幹事長は、渋滞してまで無料化を進める必要は無いと、無料化政策を撤回してしまう始末。ムダ使い根絶の掛け声の下で、民主党政権下での天下りは4200人を超え、企業献金は復活し、国家公務員の総人件費2割削減・議員定数の削減は、いまだ手つかず状態です。

通常国会では、予算関連法案が成立する見込みは無いようですが、民主党政権には自ら法案を見直す考えはありません。マニフェストに掲げた政策は破綻していることを事実上認めていながら、そのマニフェストに固執して編成した予算案や政策を見直さないというのです。全く筋がとおりません。予算関連法案の成立遅れが国民生活に及ぼす影響が懸念されていますが、菅首相が過去にとってきた手法を考慮すれば、自ら決断して譲歩することはせずに、予算を人質にして自らの延命を図るであろうことが容易に想像できます。寄り合い所帯の民主党内には、小沢一郎元代表とその取り巻きのように、この破綻したマニフェストの完全履行を主張する一派まで存在するのです。

 大辞林には「筋が通らないこと。道理が立たないこと」を不条理というとあります。菅首相は今年の年頭の施政方針演説で自らの国づくりの理念を三つあげました。そのうちの一つが「不条理をただす政治」です。不条理に満ち満ちた政権運営を続けるその本人が、不条理をただす政治を行うと、しゃあしゃあと語ることほど不条理なことはないでしょう。取り巻き連中を扇動して政権に謀反を唱えさせ、一層の混乱を引き起こしている小沢一郎元代表が主導して作成した2007年参議院選挙のマニフェストの表紙には、「自らの政治生命が第一」という本人の思惑とは裏腹の「国民の生活が第一」と書かれています。不条理もここまでくると腹立たしさを通り越して、滑稽さを感じてしまいますね。


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