この無能政府に復興ができるか?(東日本大震災)
2011.3.30
方向を示さない政府 ここ数年、車で街を走っていて気になっているのが、交差点の曲がり角や、車線変更の際に方向指示灯(ウィンカー)を点滅させないドライバーが増えていることだ。交差点でウィンカーを出さずに信号待ちをしていて、信号が青に変わって発進した途端に左折、又は右折する車がざらにある。その際も、曲がる直前にウィンカーを出すのは、未だ「ましな」方で、結局、ウィンカーを全く出さないまま曲がり切ってしまう無礼者を目撃することもしばしばである。ウィンカーは、自らの行動予定を、事前に周囲に知らせておいて、当事者同士が互いに協調し合って、トラブル発生を未然に回避しようという意図で使用するものである。常習的にウィンカーを出さない不心得者は、他人に対する思いやりに欠けた厚顔無恥のドラーバーと見なされてもしかたがない。
英国エコノミスト誌は、3月24日付の記事「日本の大惨事 さらにリーダシップの危機も」( http://www.economist.com/node/18441143?story_id=18441143 )で、被災地が燃料不足で喘いでいるにもかかわらず、石油備蓄法で民間の石油会社に義務づけているガソリンや灯油などの燃料備蓄量の規制によって石油会社が燃料を放出できない状況にあったことを取り上げ、「この大惨事では備蓄分を使用するのは当然のことなのに、政府が備蓄分を放出させるのに10日も要した。しかも(政府の石油会社に対する)命令ではなく、お願いによって・・」と書いた。経済産業省が備蓄量の規制値を67日分から45日分に引き下げて、余分の22日分に相当する924万キロリットルを震災発生後10日目になってようやく放出させたことを例にあげて、古い法規制の枠に日本政府が縛られて対応のスピードが遅いことを揶揄している。さらにエコノミスト誌は、Mr.Kanは、震災の当初から「非常事態宣言」を出すべきだったこと、さらには「船頭多くして(many-headed)・・の危機に対処できる明確な指揮命令系統が未だに確立されていない」と警告している。
16年前の阪神・淡路大震災では、村山富市首相の自・社・さきがけの連立政権は、首相が無能で初動遅れの大失態があったものの、自民党が実質バックアップしてその後の復興活動に向けての対応は早かった。震災発生(1月17日)から20日後には、予備費148億円の使用を決定し、42日後には震災復興対応の1兆円余の補正予算(H6年度第二次)も成立させた。関連する法律も約1ケ月後の2月20日には「地方税法改正」、「災害被害者に対する租税の減免・徴収猶予」、「被災者に係わる国税臨時特例法」を成立させ被災者の税への不安を解消し、2月24日には「復興の基本方針及び組織に関する法律」を成立させ、さらに26日には「被災市街地復興特別措置法」、3月1日には「公債特例法」、「地方交付税特例法」、「被災失業者の公共事業への就労促進特措法」など4法案、3月27日までにさらに5法案を成立させている。 無能政府にできるか? 震災被害の実態の調査などを全て、地方自治体まかせにして、未だに被災規模の全容さえ把握できていない政府には、復興予算の枠組み造りさえ容易にできないだろう。今まさに原発事故で故郷を追い出された人々や、農産物/海産物の汚染や風評被害で苦しんでいる人々に対してさえ、東電と国で補償すると口では言いながら、安堵感を全く与えられない政府に、被災者の心情やニーズに即した復興指針が策定できるとは到底思えない。
29日夜、テレビのニュース映像は、従業員に給料を払えないため被災地のハローワークに「雇用保険失業給付の震災による特例措置」について相談にきた会社経営者を映し出している。この特例措置は、事業所が震災で被害を受け、休業・廃業を余儀なくされて、雇用保険の被保険者である従業員が賃金を受け取ることが出来ない状態にあるとき、その従業員は実際に離職していなくても失業給付を受給できるというものである。申請書類を渡されたその経営者は「津波で何もかも失ったのに、こんなに書類を付けろといわれても・・・できない」と目に涙を浮かべてつぶやく。
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