この無能政府に復興ができるか?(東日本大震災)    2011.3.30   



方向を示さない政府

 ここ数年、車で街を走っていて気になっているのが、交差点の曲がり角や、車線変更の際に方向指示灯(ウィンカー)を点滅させないドライバーが増えていることだ。交差点でウィンカーを出さずに信号待ちをしていて、信号が青に変わって発進した途端に左折、又は右折する車がざらにある。その際も、曲がる直前にウィンカーを出すのは、未だ「ましな」方で、結局、ウィンカーを全く出さないまま曲がり切ってしまう無礼者を目撃することもしばしばである。ウィンカーは、自らの行動予定を、事前に周囲に知らせておいて、当事者同士が互いに協調し合って、トラブル発生を未然に回避しようという意図で使用するものである。常習的にウィンカーを出さない不心得者は、他人に対する思いやりに欠けた厚顔無恥のドラーバーと見なされてもしかたがない。


  東日本大震災後の未曾有の国家的危機にあってこの日本を仕切っているらしい民主党政権も、ほとんどウィンカーを出さない。20万人を超えると思われる人々が避難している福島第一原発事故でも、避難生活が何時まで続くのかの見込みを一切、避難者には伝えていない。収束の見込みは「神のみぞ知る」などとほざいた副大臣もいた。計画停電についても「4月〜5月は無いでしょう、夏は電力需要が逼迫するから、あると思います・・」などと、東電に言いたい放題に言わせておいて、何時収束するかについては、全く答えていない。菅首相は、東電は全く信用できないからと、原子力や危機管理が専門の内閣官房参与を次々と増員しておきながら、この電力不足をどう解決するかは、東電にマル投げして、解決に向けての行動指針さえ示していない。2007年の参議院選挙も、2009年の衆議院選挙でもマニフェストの表紙には、ウィンカーも出さない政権にとっては、白々しい「国民の生活が第一」という言葉が踊っていた。「国民への思いやりに欠けているからウィンカーが出ないのではありません。行き先が自分でも分からないからウィンカーは出せないのです」というのが本音のところかも知れないが、これを言ってしまったら御終いです。


非常事態宣言

英国エコノミスト誌は、3月24日付の記事「日本の大惨事 さらにリーダシップの危機も」( http://www.economist.com/node/18441143?story_id=18441143 )で、被災地が燃料不足で喘いでいるにもかかわらず、石油備蓄法で民間の石油会社に義務づけているガソリンや灯油などの燃料備蓄量の規制によって石油会社が燃料を放出できない状況にあったことを取り上げ、「この大惨事では備蓄分を使用するのは当然のことなのに、政府が備蓄分を放出させるのに10日も要した。しかも(政府の石油会社に対する)命令ではなく、お願いによって・・」と書いた。経済産業省が備蓄量の規制値を67日分から45日分に引き下げて、余分の22日分に相当する924万キロリットルを震災発生後10日目になってようやく放出させたことを例にあげて、古い法規制の枠に日本政府が縛られて対応のスピードが遅いことを揶揄している。さらにエコノミスト誌は、Mr.Kanは、震災の当初から「非常事態宣言」を出すべきだったこと、さらには「船頭多くして(many-headed)・・の危機に対処できる明確な指揮命令系統が未だに確立されていない」と警告している。


 非常事態宣言については、2月22日にクライストチャーチ地震でニュージーランド政府が、同国史上初めて国家非常事態宣言を発令して事態の収拾にあたったのが記憶に新しい。日本国内ではあまり話題になっていないが、BNOニュース等によると今回の関東東北太平洋沖地震の津波によって港湾が壊滅的打撃を受けた米国のカルフォルニア州とオレゴン州も非常事態宣言を発令して、連邦政府の支援を受けながら復興活動を進めている。日本には、国家の「非常事態」に的確に対処するための法的な枠組みは存在しないが、産経新聞が、震災と原発事故で株価が大暴落した翌日の3月16日付の乾正人政治部長の署名入り記事「非常事態宣言 なぜ出さない」など複数の記事で述べているように、速やかな復興のためには、現行法の枠内で、私権を一定限度まで制限してでも、交通の確保、物資の供給の円滑化、ライフラインの整備などを進めなければならない。前述の石油備蓄法などの救援・復興活動の障害になる法規制も期限を定めて臨時特例法などで克服する必要がある。


阪神大震災では

  16年前の阪神・淡路大震災では、村山富市首相の自・社・さきがけの連立政権は、首相が無能で初動遅れの大失態があったものの、自民党が実質バックアップしてその後の復興活動に向けての対応は早かった。震災発生(1月17日)から20日後には、予備費148億円の使用を決定し、42日後には震災復興対応の1兆円余の補正予算(H6年度第二次)も成立させた。関連する法律も約1ケ月後の2月20日には「地方税法改正」、「災害被害者に対する租税の減免・徴収猶予」、「被災者に係わる国税臨時特例法」を成立させ被災者の税への不安を解消し、2月24日には「復興の基本方針及び組織に関する法律」を成立させ、さらに26日には「被災市街地復興特別措置法」、3月1日には「公債特例法」、「地方交付税特例法」、「被災失業者の公共事業への就労促進特措法」など4法案、3月27日までにさらに5法案を成立させている。

無能政府にできるか?

 震災被害の実態の調査などを全て、地方自治体まかせにして、未だに被災規模の全容さえ把握できていない政府には、復興予算の枠組み造りさえ容易にできないだろう。今まさに原発事故で故郷を追い出された人々や、農産物/海産物の汚染や風評被害で苦しんでいる人々に対してさえ、東電と国で補償すると口では言いながら、安堵感を全く与えられない政府に、被災者の心情やニーズに即した復興指針が策定できるとは到底思えない。


  30日付の読売新聞朝刊によると政府は復興事業を統括する新組織として菅首相を本部長として全閣僚が参加する「・・被災地復興本部」を設置する方針を固め、担当閣僚として「復興相」を置き、仙谷由人官房副長官か松本防災相を起用する方向で調整しており、併せて同本部の傘下で事務局機能を担う「復興庁」の新設も検討しているという。これでもかと言うほどに組織や人ばかり増やして前述のエコノミスト誌が指摘する「many-headed」の混乱状態をわざわざ造り出す。無能政権の面目躍如というところか。


  復興事業を迅速かつ効果的に進めるためには、民主党政権は面子を一切棄てて、破綻したマニフェストへの固執(バラマキ政策への固執)を止め、野党の提案にも真摯に耳を傾け、良い提案を積極的に受け入れ、野党と協調したスピード感のある国会運営を心がけることである。あのイラ菅にお前の人格を変えろと迫らなければならない至難の業である。


  復興大臣候補の仙谷官房副長官は、震災前の官房長官時代の国会で、野党の質問に真摯に答えることはほとんど無く、質問をはぐらかし、おちょくり、時に関係者を恫喝し、結果として国民を馬鹿にし、さらに尖閣事件では独断専行して国益を決定的に失い、「自衛隊は暴力装置」発言に対する参院の問責決議でようやく表舞台から退いた国民の敵ともいうべき人物である。この人物に野党と協調して復興関連法案の立案・成立を円滑に進めることができるとは到底思えない。民主党の一部には関東大震災後の東京の復興を担った後藤新平の再来を期待する向きもあるというが、チャンチャラおかしい。

 

29日夜、テレビのニュース映像は、従業員に給料を払えないため被災地のハローワークに「雇用保険失業給付の震災による特例措置」について相談にきた会社経営者を映し出している。この特例措置は、事業所が震災で被害を受け、休業・廃業を余儀なくされて、雇用保険の被保険者である従業員が賃金を受け取ることが出来ない状態にあるとき、その従業員は実際に離職していなくても失業給付を受給できるというものである。申請書類を渡されたその経営者は「津波で何もかも失ったのに、こんなに書類を付けろといわれても・・・できない」と目に涙を浮かべてつぶやく。


  被災者の実情を全く配慮せず、ただ機械的に手続きを決める。被災者に対する優しさの欠片もない。これが「国民の生活が第一」とうそぶく無能政府の実態なのだ。しかし、その経営者は言う。「でも・・・頑張ります」と。


 



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