ソニータブレット(SONY TABLET S)電源ボタンの修理
                                            2014.12.15 
 




<プロローグ>


 寝そべっても、コタツに入ったままでも使える便利な携帯パソコンとして重宝していたSony Tablet S(SGPT111JP/S)が、購入して2年6ヶ月目を迎えた先月末に電源ボタンが凹んだまま元に戻らず(p1)、電源のオン・オフが出来ない状態になってしまった。一日あたり数回〜10回以上、オン・オフの操作を繰り返していたので、ボタンを押し込んだ回数は累積で10,000回を超えているかもしれないが、この程度の使用頻度で壊れてしまうとは情けない。不覚にも悪名高い「ソニータイマー」の罠に嵌まってしまったようだ。ネット情報によると修理代は軽く2万円を超えると言う。

    
    p1 凹んだままの電源ボタン


 2万円も出費するのであれば、これを機会に台湾メーカの7〜8インチ程度の軽くて安価なタブレットに乗り換えようか・・などと思案していると、例の如く、我が家の勘定奉行のN子から「修理したら?」の注文がつく。確かに31,800円も注ぎ込んだタブレットを電源ボタンだけの不具合で捨ててしまうのは馬鹿らしい。ネットにあたってみると、「のりさんのブログ」など、このタブレットを分解して電源ボタンの機構部にアクセスしたブロガーもいらっしゃるようなので、これらを参考にさせてもらいながら修理に挑戦してみることにした。以下は、私が試した修理手順のあらましです。



<修理手順>

【黒色のプラスチック製カバーの取り外し】


(1) 
まずタブレットのケースの裏側を覆う黒いプラスチック製のカバーに設けられた二箇所の樹脂製の「ネジ隠し」(p2)を外します。樹脂の外周部(p3)に小さなドライバー(マイナス)の先端を挿入して持ち上げると外れます。(外装部にキズをつけ易いので慎重に作業します。外した「ネジ隠し」は、修理完了後に再装着しますので捨てずに保管します)


         
       p2 ネジ隠し         p3 ネジ隠し(拡大)      


(2)
ネジの頭が現れる(p4)ので、ドライバーでネジ(二箇所)を外します(p5)

             
   p4 ネジの頭が現われる      p5 ネジを外す

(3) 次は、黒いプラスチック製カバーを外すのですが、これはちょっと厄介です。まずカバーの下側端部の内装フレームとカバーのほんの少しの間隙に小型ドライバー(マイナス)の先端を挿入して(p6a)(p6b)カバーを持ち上げます。そして内装フレームからカバーを剥がしていくのですが、簡単には剥がれません。カバーの下端部の左端から中央に向かってドライバーの先端をフレームとカバーの隙間に突っ込んで、少しづつ剥がしていきます。カバーを留めている樹脂が破断してパキッ、パキッという音がしますが、かまわずに剥がします。(少々、力が要ります)

(4) 黒いプラスチック製のカバーは、その湾曲した部分で、内装フレームに貼った両面接着テープ(p7)によって内装フレームに接着されていますので、カバーを反時計回りに引き剥がすように持ち上げていくと、外れます。(これも少々、力が必要です。「ひょっとするとカバーのプラスチックが割れてしまうかも・・?」と心配になりますが、そこでもう一
息、力を入れて剥がすと「パカッ」という具合に外れます)


              
   p6a ドライバーを差し込んで・・  p6b 端から中央へと・・      p7  接着テープ


(5)
内装フレーム(黒)が現れ、回路基板の一部も見えます(p8)

    
      p8  内装フレーム



【グレー色の外装部の取り外し】


(1)
 次にグレー色に塗装した外装部(p9)を外します。そのためには、まず内装フレームの下端に設けた二つのネジ(p10)[二箇所]をドライバーで外します。

         
     p9 グレー色の外装部         p10 ネジの位置


(2)
さらにグレー色の外装部の上端にドライバー(マイナス)の先端を挿入して(p11)、外装部を下方に引っ張ります。これを左右、それぞれについて繰り返すと、グレー色の外装部が外れます(p12)

         
    p11 ドライバの先端で・・       p12 外れた外装部



【タブレット側方の外装部の取り外し】


(1)
次にタブレットの側方に配置した電源ボタンが設けられているグレー色の外装部(p13)を外す必要があります。このためには、まず外装部を留めている左上隅のネジ(p14)を外します。

       
      p13 グレー色の外装部             p14  ネジの位置


(2)
この外装部は、三箇所の爪(ツメ)(p15a)で内装フレームに設けた凹部に留められていますので、この爪(ツメ)を上方から大きめのドライバー(マイナス)で下方に押し込みながら、外装部を横方向に引っ張り出します(p15b)。(下側の二箇所のツメを同時に上方から押し込みながら、外装部を横に引っ張ると、外装部の下側半分を引き出せます。さらに残り一箇所のツメを押し込んで横方向に引っ張ると、外装部全体を引き出せます)


            
     p15a 爪(ツメ)の位置         p15b 引き出した外装部



【電源ボタンの修理】

(1)
 本体側に並んだスイッチ列(p16)と、電源ボタンのプッシュ部(p17)とが目視で確認できます。


          
   p16 スイッチ列(右端が電源スイッチ)      p17 プッシュ部(右端)


(2)
プッシュ部は、一体成形加工した樹脂製バーの二箇所で見事に破断(p18)していました。


    
         p18  破断箇所

 

 タブレットを辞書/百科事典/新聞の代替品として使うのが当たり前のご時世です。製品寿命を5年と想定しても、電源ボタンは数万回のオン・オフを繰り返すことになります。押圧が数万回も印加されるプラスチック製のプッシュ部をこんなに細い二本の「樹脂製」のバーだけで支えるとは・・? とんでもない設計です。しかもオン・オフの頻度が全く異なる「スピーカの音量調整ボタン」と「電源ボタン」の押し込み機構が同一設計なのですから呆れてしまいます。量産化にあたって、品質保証部門は、どんな評価試験をやったのでしょうか? 


 本業の「物造り」の大切さを忘れて、金儲けの対象を音楽や映画どころか、保険や金融分野にまで広げ、他人の財産を右から左に転がすだけでガッポリ稼ごうなどと考えるSONYの経営トップの異常な心理が、最前線のハードウェア設計者や品質保証スタッフの感性まで狂わせてしまっているように私には思えるのですが・・・。現在のSONYの苦境は、まさに「天罰」が下った結果でしょう。

(3) 次は、この破断箇所の修復です。瞬間接着剤で接合しても、オン・オフの繰り返しには堪えられないでしょう。いっそのこと破断箇所をエポキシ樹脂で固めてしまった方が良いのでは・・との素人判断で、近所のDIYショップで購入した二液性の「ハイスピードエポ」(コニシ製 ¥289 税別)(p19)を使ってみることにします。

     
    p19 エポキシ系接着剤   
    

(4) 主剤と硬化剤を混合した接着剤を破断箇所に注入します(p20)。(ちょっと、塗り過ぎたかも・・?)さらに接着剤の取扱説明書に従って実用強度に達するまで硬化させます。

 プッシュ部が硬度十分のエポキシ樹脂でガチガチに固定されるので、オン・オフを繰り返すと、意図しないプラスチック領域にクラックが生じるなどの「二次災害」が発生する懸念もありますが、修理できなければ、タブレット本体を捨てることになるのですから、これで良しとしましょう。

     
     p20 塗布したエポキシ系接着剤



【動作確認と再組み立て】


(1)
修理(接着)が完了した電源ボタンを嵌め込んだグレー色の側方外装部(p21)を内装フレームに嵌め込みます。(外すときは、少々難渋しましたが、装着は極めて簡単です。外装部の爪(ツメ)が、内装フレームの凹部に嵌合して、「カチャ」で完了です)

       
     p21 修理が完了した電源ボタンを嵌め込んだ外装部



(2)
電源ボタンを押し込んで、正常に機能することを確認します。押した感じが「堅め」ですが、ちゃんと動きます。


(3)
さらにタブレットを元通りに組み上げます。こんな具合に出来上がりました(p22)

       
        p22 再組み立てが完了したタブレット



(4) 接着剤の塗布・硬化時間(約1時間)を除くと、作業時間は写真撮影時間や工具を揃える時間、試行錯誤した時間などを含めて、約1時間20分でした。


(5)
 使用した工具は、これだけ(p23)、修理費用は約300円です。

            
       p23 使用した工具(10円硬貨などはサイズの比較用です)



<エピローグ>


 復旧して一週間が経過しましたが、電源ボタンは正常に機能しています。エポキシ樹脂で固めたために、さすがにプッシュ時の弾力性(復元力)は激減していますが・・。かえって「ボタンを扱い易い」とN子には好評です。


  今度、同様のメカニズムの不具合が再発したときには、「電源ボタンを取り外して窓を作り、棒状のもので直接、基板側のスイッチを押す」という奥の手を使おうと思います。とにかく末永く使い続けることが「ソニータイマー」に対するユーザとしての「報復」になりますからね。アハ。




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