裏六甲 赤子谷右俣(兵庫県西宮市/宝塚市) ルートMAP |
【 山行日時/ルート 】 日時:2023年12月21日(月) 天候:晴れ、時々曇り ルート:生瀬駅 → (生瀬水路道) → 施錠ゲート → ケルン(右・左) 10:45 10:52~11:17 11:23 11:37 → 右俣での最初の堰堤 → 二番目の堰堤 → 三番目の堰堤 11:47 11:52 12:01/12:21(昼食) → 四番目の堰堤 → 大木(左折ポイント) → 縦走路合流ポイント 12:42 13:21 13:51 総時間(道迷い・ルート探索・昼食・休憩等の時間を含む):3時間 8分 【 プロローグ 】 今月中旬に「裏六甲から六甲山系の主稜線に登る」山行シリーズを再開してから「六甲山系登山詳細図(東編)」(2023年1月 吉備人出版)[以下、登山詳細図という]に記載されたルート図を東方向に順番に12/10(日) 船坂谷道、12/13(水) 清水谷道、12/18(月) 座頭谷ルートと歩いてみた。 次は「大谷左岸ルート」、さらに「ナガモッコク尾根」の順番になるが、大谷左岸・・は、ネットに山行情報がほとんど無く、またナガモッコク・・は 2017年頃に登山道に大規模な崩落があったというが、その後の状況がよく分からない。そこで、この二つのルートは後回しにして「赤子谷右俣」を12/21(木)に歩いてみることにした。 赤子谷右俣ルートは、昭文社の山と高原地図 六甲・摩耶(2021年版)では "難路" を表す破線で示され、コース上に !マーク(通過に注意)が二箇所、?マーク(コースを誤り易い)が一箇所ある。また登山詳細図では「道標がない経験者向き」のコースに分類されている。 赤子谷右俣への取り付きは西宮市塩町生瀬のビーコンパークスタジアム(野球場)付近にあり、JR線の生瀬駅から "生瀬水路道" を歩いてアクセスする。 【 生瀬駅 → (生瀬水路道) → 施錠ゲート 】 生瀬駅(p1)の改札を出た東側の丸型椅子が置かれたエリアで出発準備をしてから、この冬一番の寒波がもたらす強い北西風を受けながら駅前道路を西に向かう。生瀬駅から六甲山系にアクセスするのは今回が初めてだ。 駅前のミニコープの西側で左折(p2)して歩道がついた登り勾配の道路(p3)を南方向に歩く。道なりに右に折れてからU字型に反転して左手に住宅街を眺めながら今度は北方向に進む。さらに、道なりに西に向きを変え、右手に児童公園を確認しながら西方向に進む。住宅街の西端に達してから南方向に進み、街路の終端から "生瀬水路道"(p4)に入る。 p1 生瀬駅 p2 ミニコープ西側で左折 p3 舗道を南方向に往く p4 住宅街から水路道へ 横幅が数十センチのU字型の水路に綺麗な水が流れ、その脇を歩き易い小道が西方向に延びている(p5)。山側から沢が降りて来るポイントにはしっかりした仮設橋(p6)が架けられている。小道脇の掲示板によると、この水路道は地元の自治会によって管理されているらしく、維持整備は極めて良好なようだ。 p5 生瀬水路道 p6 仮設橋 "生瀬水路道" これは只者ではないと認識し帰宅後ネットに当たってみると、7月号 街道と生きる 宿駅生瀬の 歴史と文化財|西宮市ホームページ や 生瀬周辺の文化財をめぐる | 聞きかじり西宮歴史散歩 などの貴重な 資料が見つかった。 その昔、生瀬地域は丹波・播磨と摂津を結ぶ街道の要衝として発達し、江戸時代(摂州有馬郡生瀬村)には幕府の 宿駅に指定されて大いに栄えたという。すなわち当時、生瀬地域の住民は有馬温泉へ向かう湯治客や中山寺への 参詣者の休憩や宿泊の世話をし、西宮や伊丹へ運ばれる米などの荷物を中継するなどして生活を営んでいたよう だ。 生瀬地域は河岸段丘上に位置していたため、より低いエリアを流れる武庫川の水を利用しにくかった。その上、 井戸を掘っても、地下水には炭酸が含まれていて生活用水には適さなかったらしい。このような事情から江戸時代 中期には "水路" を造り太多田川の上流から水を引いて利用していた由で、現存の生瀬水路は、江戸時代から受け 継がれたものを明治末期以降に本格的に整備して昭和期まで生活用水として供してきたものを、その後も大切に 維持してきたものらしい。 "生瀬水路道" は生瀬地域にとって極めて大切な "水路" を維持整備するために設けられたメインテナンス道で あることが分かりました。 生瀬駅から20分強で右手に昔の水道施設らしい廃屋があり、その手前に左に折れる踏跡(p7)がある。これは赤子谷東尾根へのアクセス路のようだ。さらに3分ほど歩くと左に折れる沢沿いの小道(p8)がある。これは赤子谷の取り付き(ケルン 左・右)まで延びているようだが、今回は登山詳細図のルート図どおりに歩く予定であるため水路道をそのまま進む。 生瀬駅から30分強で辺りが開けて(p9)、水路道は南北方向に延びる舗道に合流する。真正面から眩しい陽光を浴びながら上り勾配の舗道を南方向に往く。道路脇の右手にテニスクラブ、左手に野球場(ビーコンパークスタジアム)の入口をパスして舗道を直進するとゲートがあり、右手道路脇に "関係者以外立入禁止" の看板が立っている。ゲートは開放されているので、そのまま進むと正面に赤錆まみれの施錠された白ゲート(p10)が現れる。生瀬水路道から舗道に合流して5分ほど。生瀬駅からは38分である。 p7 赤子谷東尾根への分岐 p8 赤子谷入口への分岐 p9 辺りが開ける p10 施錠されたゲート 【 施錠ゲート → ケルン(右・左) 】 施錠されたゲート前で左折(p11)して下り勾配の舗道(p12)を50m余進むと、右手の石垣が途切れたポイントで右(南)方向から降りてくる沢がある(p13)。ここが赤子谷への登山道の取り付きである。沢の右手を南方向に進んで、直ぐ残置テープに誘導されながら右手の土手に上がる。さらにテープを頼りに左手に堰堤を眺めながら進むと、明瞭な踏跡(p14)になる。踏跡を進むと直ぐに左手を流れる沢に架かる西宝橋(p15)の横(西側)を通過する。 "古い木材を並べた頼りない橋" と、ネットで有名な古木橋(p16)が前方に現れる。下を流れる沢は水量が豊富で轟音を放っている。これを渡るのは高所恐怖症ジジイにとっては確かに試練だ。貧弱な橋に見えるが橋桁は鉄骨のようなので、橋桁の上を歩けば少しは安心かもしれない。木材に躓(つまづ)いて態勢を崩して転倒しないように慎重に渡る。 p11 施錠ゲート前で左折 p12 舗道を下る p13 沢の右手を南へ p14 明瞭な踏跡を往く p15 西宝橋の横を通過 p16 古木橋 シダの茂った一画を通過し、右手に堰堤を眺めると左手の木枝にテープが巻かれた分岐に至る(p17)。赤子谷の取り付きから10分ほどである。左手に進むと赤子谷東尾根へ向かうようだ。ここは道なりに右手に進む。直ぐに踏跡は二つに分かれる(p18)が、右手に進むと沢に突き当たる。左手に小石を積み上げたケルン(19)があるので、正規ルートを進んでいると判断して、残置リボン(p20)を追いながら沢に降りる。暫し遡上してみるが、残置テープが途切れてしまう。 p17 分岐を右へ p18 再びY型分岐 p19 左手にケルン p20 リボンを追って沢へ 右岸(沢の上流に向かって左手の岸)に踏跡らしいものが見えるので右岸に上がってみると、明瞭な踏跡(p21)が南方向に延びている。先ほどの分岐では左手に進むのが正解だったようだ。この道迷いで早くも5分ほどを失ってしまった。 踏跡を南方向に辿ると直ぐに苔むした大きな石積み[ケルン](p22)があり、北向きの横腹の位置に酷く赤錆びた元々は白色だった金属プレートが置かれている。プレートには「左俣|右俣」と書いてある。 p21 南方向への踏跡 p22 「左俣/右俣」の表示 【 ケルン(右・左) → 右俣での最初の堰堤 → 二番目の堰堤 → 三番目の堰堤】 ここで、左手に進むと美しい滝やゴルジュなどが愉しめてハイカーに人気がある赤子谷左俣[注]。今回は右俣を歩くので右手に進む(p23)。一頻り厳しい上り勾配の登山道を往くと尾根(p24)に出る。ルートを誤って赤子谷中尾根に入り込んでしまったか?・・の思いが一瞬頭をよぎったが、前方にネット情報で見覚えがあるY字分岐(p25)が現れて一安心。この分岐で左手の尾根道を往くと赤子谷中尾根ルート。赤子谷右俣へは倒木を越えて右手(p26)に進む。 [注] ネット情報によると 2023年4月に赤子滝やゴルジュに近いポイントで大規模な崩落があった由。 p23 右俣は右手に進む p24 尾根に出る p25 Y字分岐で右へ p26 倒木を越えて進む 緩い下り勾配の踏跡を往くと、8分ほどで赤子谷右俣で最初の堰堤(p27)が現れ、右岸(左手)からこれを越える。沢に降りて(p28)、大小の岩(p29)を踏みながら沢を遡上する。最初の堰堤から5分ほどで、前方に赤子谷右俣で二番目の堰堤(p30)が現れる。 p27 堰堤を左手から越える p28 沢に降りる p29 沢を遡上する p30 二番目の堰堤が現れる 二番目の堰堤はテープに誘導されて右手(p31)に登って、左岸(堰堤にむかって右手)から越える。再び沢に降りると、正面に右俣三番目の堰堤(p32)が現れる。丁度昼時、空腹感も生じているので、堰堤の北側の大きな岩に腰を下ろして昼食大休止とする。 p31 右手に登る p32 三番目の堰堤が現れる むすび飯のあと "母恵夢"、"ドラ焼き"、"甘栗ぜんざい" など、糖分たっぷりのデザ-トで愉しむ。今日は風速9m/s の西風が吹くとの予報が出ていたが、この谷はほぼ無風状態だ。 【 右俣三番目の堰堤 → 四番目の堰堤 】 三番目の堰堤は、堰堤に向かって左手の斜面(p33)を登り右岸(沢の上流に向かって左手)から越える。越えたら沢に降りて(p34)、左岸(沢の上流に向かって右手)側に渡渉して、左岸(p35)を往く。ここでは、左手(東側)から沢が降りて来ているので惑わされないことと、左岸に渡渉してから右手山側に急勾配の斜面が続く(それが故に崩落も生じている)ことを意識しておくことが肝要です。 p33 左手から堰堤を越える p34 沢に降り左岸へ渡渉 p35 左岸を往く 前方に大崩落区間(p36)が現れるが、左岸(沢の上流に向かって右手)に巻き道が出来ている。残置テープ(p37)に誘導されながら崩落区間の右側の砂地エリアを延びる巻き道を往く。右手山側が急斜面なので山肌にへばり付くように造られた巻き道は狭く、しかも左手の谷側が切れ落ちているので危険が一杯だ。残置テープを追って安全を確認しながら前進する。こちらに進んだ方が安全では・・と思っても、残置テープによって別ルートに誘導され "エエッ、此処を行くのかよ!" と思わず大声を出してしまう。ルート探しが意外に手間取る。 p36 大崩落エリアは右手に巻く p37 テープ誘導で巻き道を往く 左手が切れ落ちた柔らかい土砂道(p38)の狭い一画を慎重に通り抜け、右手上方の土砂崩れエリア(p39)の凄まじさを確認してから、大量の倒木(p40)を越える。赤子谷右俣の沢は、本来はこのように美しかった(p41)はずなのだが・・。 p38 柔らかい土砂道を往く p39 土砂崩れエリア p40 大量の倒木を越える p41 本来の沢の姿? 左岸(p42)をそのまま進んで四番目の堰堤を左岸(上流に向かって右手)から越えることになるが、これが少々厄介。まずは左手が切れ落ちた狭い経路(p43)をロープの助けを借りながら通過する。通過して振り返ると、こんな(p44)感じ。高所恐怖症の基礎疾患を有するジジイは谷底を見てはいけません。 p42 左岸を往く p43 左が切れ落ちた経路 p44 ロープが設置された狭い経路 次にこの斜面(p45)を降りて、堰堤の上に出る。お助けトラロープが設置されているが、ロープは朽ちかけた細い老木に留められている(p46)のでスリル満点。ロープに頼らず、足裏を預けるポイントを確保しながら降りるも、落葉で靴底が滑って体勢を崩し、思い切りロープにすがってしまう。しかし、幸いにも何事も無し。降りてから斜面を眺めると、こんな具合(p47)です。降下中に何かのはずみで身体が1mほど横(北側)にずれると堰堤(p48)の上から谷底に落ちてしまう危険があるので慎重な行動が必要です。 p45 斜面を降りて堰堤上へ p46 ロープの固定箇所 p47 下から眺めた斜面 p48 谷底に落ちる危険が・・ 【 四番目の堰堤 → 大木(左折ポイント) 】 赤子谷右俣での堰堤越えは、この四番目の堰堤が最後になる。次の崩落エリアは、右岸(上流に向かって左手)の巻き道を往く(p49)。巻き道の右手が切れ落ちた区間(p50)(p51)やロープ場もあるので慎重に進む。この辺りの残置テープ(p52)は追い易く、そのまま右岸(上流に向かって左手)を往く。 p49 右岸の巻き道を往く p50, p51 巻き道の右手が切れ落ちている p52 右岸を往く 四番目の堰堤から15分ほどで、ネットの山行情報で見覚えがある "朽ちかけた木[アカマツ?]"(p53) の横を通過する。今、歩いているルートは正しいようだ。さらに5分ほど歩くと沢に降りて、対岸(左岸側 上流に向かって右手)に渡渉する(p54)。登山詳細図で "岸替" と表示されているポイントだ。 ここからは沢の横幅が広がり、石ころだらけで踏跡は見にくく、残置テープ(p55)も青、黄、白、赤とバラエティに富んで、ややこしくなる。辺りを遠くまで見回しながら注意深く進むと、ネットの山行情報で "左手前方向への転回点" とされている古い大木(p56)の立つポイントに出る(標高350m辺り)。登山詳細図には "水源" と表示されている。 p53 "朽ちかけた木"を通過 p54 左岸側に渡渉する p55 様々な残置テープ p56 左手前方向への転回点 【 大木(左折ポイント) → 縦走路合流ポイント 】 大木の脇には明瞭な踏跡があり、左手の踏跡脇には青リボン(p57)が結ばれている。踏跡(p58)は円弧を描くようにカーブして一旦、東方向に延びてから、さらに南方向に向かう。これで一安心。あとは踏跡を忠実に辿るだけだ。踏跡は南から南東方向に向きを変え、標高420mあたりからは東方向に延びる。 p57 左折して東方向へ p58 東へ進み、さらに南へ 辺りの踏跡は小石と落葉で益々識別が難しくなり、高い頻度で足が止まる。残置テープの他、靴底による摩擦で表皮が削れた丸太(p59)や断面が機械的に切断されている木材(p60)なども手がかりにしてルートを見つける。ラストは狭くなった沢筋(p61)を一気に登り切って稜線に出る(p62)。 p59 表皮が削れた丸太 p60 人工的に切断された木材 p61 沢筋を登り切る p62 稜線に出る 東六甲縦走路(全山縦走路)との合流ポイントには公設の道標(p63)が立ち、南方向の木枝の間から甲山(p64)が見える。生瀬駅からルート探索・昼食・休憩などの時間や道迷いで浪費した時間を含めて3時間8分を要した。痛めている右膝も何とか持ち堪えてくれたようだ。山中で遭遇したハイカーは無し。 p63 公設の道標 p64 甲山が見える 【 エピローグ 】 赤子谷右俣も異常気象による豪雨で谷筋の彼方此方で崩落が生じていますが、実際に歩いてみると、そこかしこに本来の谷の姿が残っていて救われる気がします。 崩落エリアには残置テープ等で誘導される "巻き道" が造られていますが、左右の一方が切れ落ちた斜面、崩れ易い砂地、倒木が堆積したエリアなどを通過する必要があり、安全確保のために十分な注意が必要です。 危険なポイントにはロープが設置されていますが、ロープ自体や支点の強度などのチェックと併せてロープに頼り切らない配慮が必要と思います。 四番目(このルート最後)の堰堤を越えた標高350m辺りからは、幅長が広い複数の沢が混在してテープ等を見つけにくいエリアを通過します。私と同様に地形図と方位磁石だけで山行を楽しんでいる皆さんは慎重なルート探索が必要です。 赤子谷右俣の登山道の維持整備に尽力して下さっている皆さんに心から感謝します。 Top Page |