六甲山 ドーント・リッジを歩く(兵庫県神戸市)       ルートMAP


 【 山行日時/ルート 】 

   日時:2023年1月12日(木)   天候:晴れ、時々曇り

  ルート:水源地前バス停 → (鍋蓋北谷) → 再度公園(昼食)→ 高雄山登山口 →  高雄山頂
        11:20            11:48/12:15    12:36     13:05/13:12

      → (南ドントリッジ) → 分水嶺越林道出合 → 北ドントリッジ入口 → (北ドントリッジ)
                    13:37       13:44

      → 森林植物園内出合 → 森林植物園正門横
          14:26       14:36


  総時間(ルート探索・休憩等の時間を含む): 3 時間 16分



【 プロローグ 】
 昭文社の「山と高原地図」の六甲・摩耶編(2021年版)を眺めていると、西六甲の高雄山(476m)の北側に "南ドントリッジ" という名称の登山道が存在することに気が付く。さらに分水嶺越林道を挟んだ北側にも "北ドントリッジ" と付記された細い黒線が北方向に延びている。

 ネット情報にあたると "神戸中央山の会" さんの山行記録に「ドントリッジは、明治時代に六甲山の登山を始めたドーント氏(H・E・Daunt)が好んで歩いた登山道」で「分水嶺越え林道で北と南に分かれ」ており「リッジ(=痩せた岩尾根)という名の通り、道幅が狭く、転ぶと大怪我・・」との解説があった。上述の昭文社の地形図ではドントリッジの北端は神戸市立森林植物園の園内まで延びているように思えた。

 昨秋の11/8、 同期入社のAさんとの紅葉狩り登山の際、森林植物園の西門から入って園内の長谷池に向かう途中で「展望台休憩所」に向かう分岐を見つけ、ドントリッジの北端がこの辺りにあるのではないか・・と探してみたが見つけられなかった。

 降水確率ゼロ%の予報が出た1/12(金)に高雄山の山頂から北方向にこのドントリッジを歩いてみることにした。高雄山には西側の蛇ヶ谷から二度登ったことがあるが、今回は高雄山の南側を東西方向に延びる六甲全山縦走路沿いの登山口から森林管理道を歩いて山頂を踏むことにする。



【 鈴蘭台駅 → 再度公園 】
 神戸電鉄鈴蘭台駅のイオンで買い込んだ弁当とデザート代わりの羊羹をぶら下げて、阪急バスの水源地前バス停から鍋蓋北谷を抜ける登り勾配の舗装道路を往く。神戸聖地霊園がある左方向に舗装道路が曲がるポイントで "桑の木工房" まで延びる急勾配の林道に分岐して、工房の東側で山道に入る。バス停から丁度30分ほどノンビリ歩いて、約一か月ぶりの再度公園に到着する。修法ヶ池の向こう(南東)側に今日の最初のターゲットの高雄山が見える(p1)

     
      
p1 修法ヶ池と高雄山


 修法ヶ池畔のベンチは元気なお婆さんハイカーでほぼ満席だ。団塊世代の男性ハイカーの数は最近めっきり減っているようで寂しい。

 "美味しそう!!" などと、通りすがりの婆さんハイカーにひやかされながらも、黙々と弁当を喰らい、羊羹を頬張ってから蛇ヶ谷に向かう。



【 高雄山へ 】
 冬枯れの蛇ヶ谷を抜けて、再度東谷を東西方向に延びる六甲全山縦走路(舗装道路)に合流する。東方向に下ると直ぐ、縦走路沿い左手に「←高雄山山頂1.0km」と表示した公設の道標(p2)が立つポイントに出る。ここ(p3)が山頂の真南方向からの高雄山への取り付きである。

 登山道(森林管理道)は、いきなりの急勾配を登り切ってから、大きく左旋回して山肌にへばり付くように延びている。高雄山を目指すハイカーの多くは市ケ原から尾根筋を辿るルートを登るためか、この森林管理道
(p4)は荒れが目立つようだ。途中で市ヶ原からのルートに合流すると思われる "右手への分岐" があるが、ここは森林管理道を往く。

            
    
p2 高雄山への道標     p3 高雄山の取付き      p4 森林管理道を往く


 高雄山への取付き
(p3)から約20分で市ケ原からの尾根筋の登山道と合流(p5)する。合流ポイントはX字型の交差点になっており、右手に進む(p6)と高雄山の山頂、左手には森林管理道がそのまま分水嶺越林道まで北方向に延びている。

          
      
p5 市ヶ原ルートと合流        p6 合流点で右手に進む


 X字型の分岐からは登山道は岩混じりの急登
(p7)になり、大きな岩塊の隙間(p8)を抜けて尾根の西側に出ると、再度山や鍋蓋山が見える(p9)

 全山縦走路沿いの高雄山取り付きから30分弱で四等三角点が埋められた高雄山の山頂
(p10)に到着する。山頂からは北方向がわずかに開けるが、それ以外は立ち木に囲まれて展望は無し。山頂にハイカーは無し。

   
  
p7 岩混じりの急登   p8 岩塊の間を抜けて   p9 再度/鍋蓋が見える   p10 高雄山の山頂



【 南ドントリッジ 】
 高雄山の山頂からは北方向に尾根筋を下る。前述の "神戸中央山の会" さんの山行記録によるとこの尾根ルートは、"南ドントリッジ" そのものである。確かに幅の狭い尾根筋を北方向に延びる登山道(p11)はリッジと呼ぶに相応しい。

 山頂から4分ほどで、左手(西方向)の蛇ヶ谷へ降りる分岐がある。これをパスして直進すると、山頂から8分ほどで道標
(p12)が立つ四つ辻に至る。北方向に延びる山道(p13)が "南ドントリッジ" であり、道標に「分水嶺越林道」と表示された方向に進む。

         
   
p11 南ドントリッジ      p12 四つ辻の道標       p13 北方向に進む


 この辺りから登山道は細い尾根道になり、リッジの様相
(p14)(p15)を示してくる。高雄山の山頂から20分ほど歩いた標高410mの岩塊(p16)によじ登ると、南方向にいま歩いて来た南ドントリッジの山稜(p17)が眺められる。

        
  
p14 リッジ状の山道(1)  p15 リッジ状の山道(2)   p16 標高410mの岩塊

  
    
p17 南ドントリッジの山稜


 岩塊からは一気に下って分水嶺越林道
(p18)に合流する。高雄山の山頂から25分である。林道脇に立つ道標(p19)には "南ドーントリッジ" の表記がある。

 合流ポイントからはコンクリート舗装された分水嶺越林道
(p20)を西方向に往く。50mほど歩くと林道は右方向へ分岐しており、この分岐した舗装路(p21)を道なりに北方向に進む。

  
 
p18 分水嶺林道に合流     p19 道標     p20 分水嶺林道を西へ   p21 分岐で北方向へ



【 北ドントリッジ 】
 舗装路(p22)は右手の廃屋化した神戸市水道局の建屋の門扉まで延びている。舗装路沿い左手の白色塗装されたガードレールの端部(p22の赤丸印)には「←北ドントリッヂ」と読める書き込み(p23)があり、後方(北側)の木立の中にある木幹に赤リボンと白テープが巻かれている(p24)。ここが "北ドントリッジ" の入口のようだ。

         
    
p22 ガードレール端部に注目    p23 ↑北ドントリッジの表示   p24 木幹にテープとリボン


 一息入れて、靴ひもを締め直し、喉を潤してから木立に突入する。木幹の赤テープに従って直ぐに左に折れて
(p25)、乾いた落葉が堆積して滑りやすい急勾配の尾根道(p26)を往く。

 南方向が開けて、今歩いて来た南ドントリッジの稜線とその後方に突き出した高雄山の山頂
(p27)が見える。北ドントリッジの入口から急勾配を6分ほどで登り切ると、比較的になだらかな狭い尾根道(p28)になる。

     
 
p25 直ぐに左に折れる   p26 急勾配の尾根道   p27 南方向に高雄山    p28 狭い尾根道


 目の前に大きな岩塊
(p29)が現れて、いよいよ四つん這いになってこれを越える羽目になる。木枝の間から南西方向に鍋蓋山とその右手に菊水山らしい山影が見える(p30)

 再び現れた岩塊
(p31)を這い上がり、狭い尾根道を伝ってから、枯葉が堆積した斜面(p32)をシャシャという踏み音を鳴らしながらよじ登る。

      
  
p29 岩塊を越える   p30 鍋蓋山が見える     p31 再び岩塊越え  p32 斜面の急登

 前方(北側)に神戸市立森林植物園の南側を東西方向に延びる尾根
(p33)が現れる。この辺りが地形図にある460mピークらしい。北ドントリッジ入口から15分弱である。

 痩せ尾根を北方向に伝うと北ドントリッジで初めての岩場道の "下り" になる。岩壁にへばりつくような体勢で、一歩づつ足裏を預けるポイントを確かめながら慎重に降りる。降りきってから岩場を見上げるとこんな
(p34)具合です。

 さらにリッジと呼ぶに相応しい痩せ尾根
(p35)を歩いてから岩場(p36)をよじ登るという行動パターンを繰り返す。

    
p33 前方に東西方向の尾根  p34 岩塊を下る   p35 痩せ尾根を往く  p36 岩場をよじ登る


 この辺りで、尾根道のほっと一息つけるポイントに石柱
(p37)が立っていることに漸く気がつく。石柱には「神戸區」(注)と読める文字が彫られている。この石柱を目印にすればルートを誤ることはなさそうだ。

    
    
p37 登山道脇に立つ石柱


(注)帰宅してネットに当たると、まず「區」は「区」の旧字体であることが分かった。さらに歴史を遡ると、明治5年の区画制度改正で兵庫県は19の「区」に分割され、その一つが「神戸区」だったという。この神戸区に周辺地域の一部が併合されて明治22年に神戸市が成立したという。「神戸區」はこの山道の開拓者の一人であるドーントさんを偲んで、当時との関連付けを意図したものなのだろうか・・。

 いったん下って登り返すと、先ほどまで眼前に眺めていた尾根に既に突入しているようだ。 北ドントリッジ入口から約25分ほどで、石柱が立つ尾根道
(p38)が右手に分岐しているポイントに至る。

 足下を見ると、木株に赤いテープ
(p39)が巻かれ、直進方向にも石柱が立つ良く踏まれた山道(p40)が続いている。国土地理院の地形図を確認すると、ここが森林植物園内の長谷池から南方向に400m位隔てた辺りにある分岐のようだ。

         
  
p38 石柱が立つ尾根道     p39 木株に赤テープ     p40 直進方向の山道


 ここは直進して木立の中を西方向に延びる狭い尾根道
(p41)を往くことにする。道沿いには石柱がしっかり立てられていて心強い(p42)
                
        
p41 木立の中の尾根道      p42 石柱がある尾根道


 このまま、すんなりと森林植物園の遊歩道に合流するだろうと思っていたが、意に反して尾根道は
(p43)どんどん狭くなり、両脇の切れ込みも深くなってくる(p44)

 やがて高所恐怖症ジジイにとってはとんでもない状況になる。尾根道の幅長が自分の身体の横幅と同じ位にまで狭くなり、しかも両脇が切れ落ちている
(p45)。ジジイの恐怖感は尋常ではない。目を閉じて進むわけにはいかないので、結局は座り込んで臀部を接地させる四点支持の体勢になってジリジリと前進する羽目になる。ほんの2~3mの10数秒間ほどの戦慄のあと、再び安心して歩ける山道(p46)になる。
 
           
 
p43 狭くなる尾根道   p44 両脇が切れ落ちて  p45 恐怖に襲われる   p46 恐怖から解放される


 山道
(p47)はそのまま西方向に延びて、森林植物園内の展望台休憩所に向かう階段道の遊歩道(p48)に合流する。北ドントリッジの入口から42分を要した。高雄山取り付きからドントリッジ北端まで遭遇したハイカーは無し。

 合流ポイント
(p49)に、ここが北ドントリッジへの北側入口であることを示す表示等は全く無し。階段道の入口の道標(p50)にも "山田道(自然観察路)"、"展望台休憩所" の表示があるだけで北ドントリッジについての記載は無い。「"北ドントリッジ" ハイキングは "自己責任" でどうぞ」というのが神戸市建設局公園部のご意向なのだろうと推察する。

  
 
p47 西へ延びる山道   p48 合流ポイント    p49 北ドントリッジの入口  p50 道標にドントリッジの記載なし


【 エピローグ 】
 安全第一の山行を心がけることが大前提ですが、木枝に掴まっての急勾配の登り、アップ・ダウンを繰り返す狭い尾根道、慎重さを要求される岩稜越えなど、特に北ドントリッジは程よい肉体的刺激やスリル感があり、面白いルートかも知れません。

 現時点でルート上に鎖、ロープ、梯子などは一切設置されておらず、慎重な行動が必須です。乾燥している冬場は堆積した落葉が滑りやすいので急勾配を下る際には特に注意が必要です。

 ドントリッジを歩くハイカーは少ないと言われる一方で、登山道は良く踏まれ、倒木や危険な崩落箇所も少なく、テープやリボンなどの目印の配置も的確です。心ある皆さんがルートの維持整備に尽力して下さっていることは間違いないと思います。深く感謝したいと思います。

 私は "下り" が苦手で、分水嶺越林道から北ドントリッジの標高460mピークまでの標高差約60mの急勾配を "下る" のを避けるために南から北方向に歩きました。結果としてこの選択は私にとっては、正しかったようです。

 木立の中を抜ける北ドントリッジの北端近くの区間は日中でも薄暗いため、明るい時間帯を選んで歩くことをお勧めします。


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