六甲山 旧摩耶道から行者尾根(兵庫県神戸市)       ルートMAP


 【 山行日時/ルート 】 

   日時:2023年1月10日(火)   天候:晴れ、時々曇り

  ルート:新神戸駅 → 旧摩耶道入口 → 学校林道分岐 → 行者堂跡地 → 行者尾根取付き
       10:18     10:39      11:09     11:40      11:59

      → 天狗道出合 → 展望ポイント(昼食) → 摩耶山頂(三角点) → 掬星台
         12:46     12:53/13:26      13:44      13:48

  総時間(ルート探索・休憩等の時間を含む): 3 時間 30分



【 プロローグ 】
  昨年末の12/28、8年振りに青谷道から上野道と歩いて掬星台に上がったが、山行の途中、行者堂跡の裏手で北方向に延びる山道を見つけた。

 帰宅して昭文社の「山と高原地図 六甲・摩耶編(2021年度版)」を参照すると、この山道はマイナールートを意味する黒色の細線で示されており、行者堂跡の北側の尾根上で二つに分かれ、一方は老婆谷に沿って北に延び、もう一方は、行者尾根と呼称される尾根に沿って北西方向に延びて六甲全山縦走路の天狗道に合流している。

 ネット情報によると、この行者尾根道は「摩耶アルプス」とも呼ばれる急峻な岩場道らしい。慎重に対応すればジジイでも安全に登り切れるという感触を得たので、雨の心配のない1/10(火)に歩いてみることにした。行者堂跡には新神戸から旧摩耶道を歩いてアクセスすることにする。



【 新神戸駅 → 旧摩耶道入口 】
 新神戸駅の新幹線乗り場のあるフロアから外(南側)に出て、駅舎に沿って東方向に歩く。左手の "団体待合せ場所" の横を通過すると、右手に "タクシー乗場"(p1)がある。前方(東側)の階段(p2)を上がると、新幹線の軌道沿いを東西方向に延びる舗道(p3)に出る。

 駅の方向に向かうヤンキー風味の高校生の一団とすれ違いながら東方向に進む。直ぐ左手に新砂子橋があるが、これをパスして直進(東に進む)すると左手に今度は道路幅が2mほどの歩行者専用の香字橋
(p4)が架かっている。


p1 タクシー乗り場の横を往く p2 駅舎東側の階段を上る  p3 新幹線軌道沿いを東へ   p4 香字橋を渡る


 橋を北方向に渡って新幹線の軌道を越えると、前方に熊内神社のコンクリート製の鳥居
(p5)がどっしりと構えている。北方向に道路を渡り、鳥居を潜って熊内神社に向かう長い石段(p6)を登る。

 登り切って右手に進むと神社の境内に入る。誰もいない熊内神社の本殿前
(p7)で今日の山行の無事を祈願してから、神社の東側を南北方向に延びる舗道に出る。

      
  
p5 熊内神社の鳥居を潜る   p6 石段を登り熊内神社へ    p7 熊内神社の本殿


 布引中学校の校舎を右手に見ながら舗道を北方向に進む。突き当たったT字路を左手(西)に進み、道なりに右に折れて階段道を北方向に登る。

 そのまま閑静な住宅街を北方向に歩くと、再び階段道
(p8)があり、登り切って道なりに進む。雲の切れ間から差し込む陽光が眩しい。

 舗道は道なりに東方向に向きを変えて "金比羅山 雷声寺"の門前
(p9)まで延びている。雷声寺の境内に入って、石段道を登り、境内(p10)を北上する。

       
  
p8 住宅街の階段道を往く    p9 雷声寺の門前に出る   p10 雷声寺の境内を北上


 左手の本堂前で手を合わせて、さらに北方向に進み石段を登る。振り返ると南方向に神戸港が望める。毎度のことだがこの「海の近さ」には驚かされる。

 境内の最後の石段を登り切ると、右手に公設の道標
(p11)があり「→旧摩耶道を経て青谷」と表示されている。矢印の方向に進むと、正面に座った不動明王の石像(p12)に睨みつけられる。思わず手を合わせて今日の道中の安全を祈願する。

 右手斜め方向を眺めると、獣避けフェンスに設けられた扉ゲート
(p13)が見える。ここが旧摩耶道の入り口のようだ。

         
   
p11 旧摩耶道の道標    p12 不動明王の石像       p13 獣避けゲート



【 旧摩耶道 】
 旧摩耶道は、いきなり急勾配の階段道
(p14)が続く。息を切らせて10分ほど登り、背中に汗が滲んできた頃、標高250mの小ピークに至る。ここから一旦、下りになり雰囲気の良い登山道(p15)を往く。

          
     
p14 急勾配の階段道      p15 雰囲気の良い登山道


 登山道
(p16)の左側は、意外に深い苧川沿いの谷だ。足を滑らせないように慎重に歩を進める。ネット情報で旧摩耶道のシンボルのように扱われている倒木(p17)を潜り、標高300mピークを北側に巻くと、登山道(p18)は東山の方向へ延びる標高差約70mのだらだら坂の登りになる。 途中、登山道脇に立つ道標(p19)で、旧摩耶道が "きゅうまやみち" ではなく "もとやまみち" と読むことを知らされる。
 
p16 左手が崖状の登山道   p17 巨大な倒木を潜る   p18 だらだら坂の登り   p19 "旧" は "もと"


 だらだら坂の登山道を登り切ると三叉路
(p20)に突き当たる。ここが学校林道分岐で、左手に進むと学校林道である。新神戸駅から約50分、雷声寺の獣避けゲートからは丁度30分の道のりだ。

 分岐で右手の山道
(p21)を進むと旧摩耶道の東側エリアに入る。このエリアの旧摩耶道は天狗道の555mピークから南東方向に延びる大きな尾根の東側斜面につけられており、右手眼下には青谷川が流れている。アップダウンが少ない歩き易い登山道で、ネット情報によると2021年の豪雨で大きく損傷したというが、岩屋近くの沢筋エリア(p22)を除いて特に危険を感じるポイントは無い。

         
   
p20 学校林道分岐を右へ    p21 左手が斜面の旧摩耶道    p22 沢筋エリアの登山道


 日中は 5m超/s の風が吹くとの予報が出ていたが、山稜と木立に遮られて、ほとんど無風状態だ。学校林道分岐から20分ほどで青谷川の支流に突き当たるT字路
(p23)に出る。左手に進むと砂防堰堤で行き止まりなので、右手に折れて小さな橋(p24)を渡り、青谷川の支流を越える。どうやらこの辺りが豪雨禍から復旧したエリアらしい。

 右手に青谷道に降りる分岐があるがパスして進むと、青谷川の源流になる北端エリアを経て建造物の跡地のようなスペース
(p25)に出る。

 そのまま進むと青谷道に合流し
(p26)、左手に行者堂の跡地がある。ここで今日初めてハイカーの姿を目撃する。重そうなザックを背負った後ろ姿は、青谷道から摩耶山に向かうようだ。


 
p23 T字路を右へ    p24 橋を渡り支流を越える  p25 建屋の跡地を往く  p26 青谷道に合流する



【 行者堂跡地 → 行者尾根取付き 】
 左手の石段(p27)を進んで行者堂の跡地を抜ける。右手の沢に沿って北方向に延びる山道(p28)を往くと、直ぐに右手に沢を渡る小さな橋(p29)がある。これを渡って今度は左手に沢を見ながら北に進む。

         
   
p27 行者堂跡地を抜ける    p28 沢沿いの山道を北へ     p29 橋を渡って北へ


 50mほど先に右手への分岐があり、「天狗道 山道はこちら」の行先表示
(p30)がある。表示は私製のもので、透明の樹脂製のカバーに挿入され、木幹に縛り付けた木柱に打ち付けたベニア板に留められている。ありがたい。右手に折れて山道を往けば、行者尾根に出られるようだ。

 「この先 行場 行き止まり×」の表示もあり、そのまま北方向に進んでみると、前方に赤色の鳥居が複数並んだエリア
(p31)があるのだが・・。ただならない霊気が漂っている雰囲気を感じて、そそくさと分岐まで戻る。

          
     
p30 分岐に掛かる行先表示       p31 鳥居が並ぶ行場


 ここでザックを下ろし、一口羊羹・チョコレート・爽健美茶で一息入れて、靴紐を締め直し、「いよいよだぞ」とジジイなりの気合いを入れて出発する。

 登り勾配の厳しい山道
(p32)を5分ほど歩くと分岐(p33)に出る。直進して下ると老婆谷(ばばだに)、左手に延びる斜面が "行者尾根" で、急勾配だが、しっかりした踏跡(p34)が続いている。ここが行者尾根の取り付き(入口)である。

         
    
p32 上り勾配の山道      p33 行者谷尾根への分岐     p34 急勾配の行者尾根



【 行者尾根 】
 急勾配の山道(p35)は、乾いた枯葉が堆積して滑り易く、所々で四つん這いになって進む。左手が切れ落ちた一画(p36)を抜けると、岩場の尾根道(p37)(p38)になり、両手を繰り出した4本脚でバランスを取りながらよじ登る。

  
 
p35 急勾配の山道     p36 左手が崖の一画    p37 岩場の尾根道   p38 狭い岩場道


 行者尾根の入口から10分ほどで、ネットで有名な岩壁
(p39)の前に出る。確かに一見すると、どこに足を置けば良いのか見当がつかないが、壁に近づくと幅が30cmはありそうな足場(p40)が存在しておりホッとする。しかし、右手眼下は完全に切れ落ちている(p41)ので高所恐怖症ジジイにとって試練であることは間違いない。

 岩壁の右側から岩上に這い上がると、南方向が大きく開けて青谷のV字型の深い切れ込みの向こうに摩耶埠頭が望める
(p42)。ノンビリ絶景を楽しみたいところだが、足下は切れ落ちているので油断はできない。


  
p39 岩壁の登攀     p40 登攀用の足場   p41 右手が崖の登攀ルート  p42 青谷と摩耶埠頭


 岩が突きだした狭い尾根道
(p43)を進み、右手に積まれたケルン(p44)をパスし、さらに痩せた岩混じりの尾根(p45)を往く。木枝に巻かれたテープや岩面にペンキで書かれた矢印(p46)の助けもあって、ルート探索は比較的容易だ。


 
p43 岩場の狭い尾根道  p44 ケルンの横を抜ける  p45 岩混じりの痩せ尾根  p46 岩面のペンキ矢印


 行者尾根の入口から30分ほどで、比較的平坦な木立
(p47)を抜ける。後方に行者尾根の北端部と思われる三角錐が見え、あそこまで登るのか・・と気合いを入れ直す。

 前方に山肌から角が尖った大岩が無数に剥き出ている急斜面
(p48)が現れる。此処から行者尾根登攀の第二ラウンドが始まるようだ。
              
        
p47 平坦な木立         p48 急斜面の岩場


 足裏を預けるポイントをしっかり確保してから、両手も駆使して大岩を抱くようにしてよじ登る。尋常でない恐怖感に襲われる登攀・・などと、形容しているネットの山行情報もあるようだが、"高所恐怖症" の基礎疾患がある我が身としては、とにかく切れ落ちている崖は上から覗き見しないということを徹底するだけでも恐怖感の軽減に効果がある。ガレてるエリアでは浮いた岩を掴んだり踏んだりしないように慎重に歩を進める。

 恥ずかしい話だが、この第二ラウンドの核心部で登攀中に撮った写真が1枚も無いことに帰宅して画像を整理している途中で気がついた。左肩のホルダーからカメラを取り出す精神的な余裕が無かった・・というより、両手が自由に使えるだけの身体的バランスが取れる機会がほとんど無かったということのようだ。

 南西方向が開けたポイントで一息いれると、明石海峡大橋が眺められる
(p49)。その左手には須磨アルプスの旗振山、横尾山が鮮やかだ。こんなに近く見えるとは・・。危険と隣り合わせの岩場登りのご褒美でしょうか?

      
      
p49 明石海峡大橋や須磨アルプスが見える


 さらに続く急勾配の斜面
(p50)(p51)を登り切ると、須磨浦の海岸線までが見えて来る(p52)

     
 
p50 急勾配の斜面   p51 急勾配の斜面を往く    p52 須磨浦の海岸線が遠望できる


 直ぐ前方に先ほど下から眺めた三角錐のトップと思われるポイント
(p53)があり、北方向に下ると天狗道(p54)に合流する。行者尾根入口から47分も要した。

           
       
p53 行者尾根のトップ       p54 天狗道に合流する



【 天狗道を経て掬星台 】
 天狗道には北西の強い風が吹きつけて躰が一遍に冷えてくる。ほとんど無風状態の南側の斜面を登っていたので風のことをすっかり忘れていた。ウィンドブレーカを着込んで、風避けになる巨岩(p55)の南側に廻って昼食休憩とする。

 天狗道を掬星台に向かう途中で8年振りに摩耶山の山頂
(p56)を踏む。西寄りの強風に襲われたウィークデイの掬星台(p57)に人影は疎ら。結局、本日ここまでの山行で、数メートル以内の至近距離で遭遇したハイカーは天狗道の3人だけでした。
            
     
p55 天狗道の巨岩       p56 摩耶山の山頂        p57  掬星台


【 エピローグ 】
 摩耶山登山の "銀座ルート" と言える青谷道などに比べて、旧摩耶道はハイカーが極端に少なく、その分静かでノンビリとした山行が楽しめます。2021年の集中豪雨で損傷した登山道は、復旧工事が完了しています。

 マイナールートである行者尾根の岩場道は、現状では公設の道標はもちろん、鎖、ロープ、梯子などの類いも一切無く、登攀にあたっては、慎重な行動が不可欠です。反面、全身に及ぶ肉体的刺激に加えて適度な緊張感とスリルを楽しめると思います。

 行者尾根道は急峻である一方、良く踏まれていて、残置テープの配置やペンキ表示なども適切で、ルート探索は容易です。登山道の維持整備に尽力されている皆さんに深く感謝したいと思います。

 行者尾根道の後半部分では、浮き石の存在が確認できる急斜面の登攀もあり、落石には十分な注意が必要です。



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