私の花粉症                                                  2011.2.3   



■ 発症


 私が花粉症を初めて発症したのは、1993年2月のことです。家族で栂池にスキー旅行に出掛け、現地で酷い風邪をひいたのが引き金でした。当時は、睡眠時間が毎日4〜5時間の会社生活を送っていて、車を信州まで走らせると、居眠り運転をしてしまう恐れがあったので、夜行バスを使ったのが仇になりました。一睡も出来ないまま現地入りして、プルーク直滑降しか出来ない子ども二人の面倒をみてゲレンデで体力を使い果たしたのが原因です。帰阪して二週間たっても喉の痛み、鼻水、咳が治まらず、春先まで性質(たち)の悪い風邪としての治療を続けました。

 翌年も2月半ばから3月半ばに掛けて喉の痛みに始まって、再び酷い風邪の症状に悩まされましたが、自分が花粉症を発症しているとは、想像だにしませんでした。その翌年が、記録的に大量の花粉が飛んだ1995年です。1月下旬、阪神大震災後の混乱のさなかに、喉の炎症に始まる風邪の症状が出ました。仕事中に咳をし、頻繁に鼻をかんでいると、突然、部長から「お前は、風邪ではなくて花粉症かも知れない。診療所の耳鼻科へ行って来い」と言われました。この部長は、前年の9月に他部門の部長から横滑りで私の部にやってきた人で花粉症の持病がありました。上長の指示なので、しかたなく耳鼻科に行くと、アレルギー検査などは一切無しで、喉が化膿し始めているからと、抗生物質と抗炎症剤、それと「トリルダン」という花粉症治療薬を処方してくれました。
 

■ 第二世代抗ヒスタミン剤 「トリルダン」
 

 このトリルダンが効きました。自分の症状にジャストフィットする花粉症治療薬を見つけるのに、皆さん大変苦労をされているようですが、私の場合は、幸運だったようです。このトリルダンを服用して風邪に似た症状は完全に消え、この時点で漸く自分が花粉アレルギー体質であることを悟りました。診療所行きを指示してくれた部長にも感謝しなければなりません。
 早速、書店で花粉症についての解説本(「花粉症 これで安心、対処のすべて」[株式会社法研 平成7年1月20日 第1刷 \980])を購入し、花粉症の発症のメカニズムや対処方法を俄か勉強しました。トリルダンは、この本の中では「抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬」として分類されていました。

 花粉症の症状は、人によって様々ですが、私の場合、咽頭アレルギーが強く、まず喉に炎症が生じて、風邪のときと同じように喉が痛くなり、その後、鼻や目にも症状が出ます。喉が何となく(微かに)いがらっぽくなり始めたときにトリルダンの服用を開始すると、酷い花粉症の症状の発生を完全に食い止めることができます。

 この1995年の1月〜2月は、震災による瓦礫の影響もあってか、阪神地域では多くの人がマスクを着用しており、私も通勤途上では、マスクを使うことにしました。この1995年の花粉シーズン以降、@12月末からトリルダンの服用を始める。A通勤時にはマスクを着用する。B1日あたり、1000〜2000mgのビタミンCを摂取する。という三つの対処法を実践しました。症状が出始める時期が、毎年少しずつ前倒し(早く)になってはいましたが、この方法で花粉の季節を乗り切ることができました。ところが、2002年の花粉シーズンに新たな事態が生じたのです。


■ トリルダンの販売停止

 トリルダンは、マリオン・メレル・ダウ社が発売したテルファナジンという製剤の商品名です。所謂、第二世代の抗ヒスタミン剤で、眠気、口渇など抗コリン作用による副作用が少ないなどの特徴があります。テルファナジンは、肝臓で代謝されてカルボン酸型代謝物であるフェキソフェナジンに変換されて薬効を生じます。ところが、テルファナジンには、心臓に対する毒性や肝機能障害の副作用があり、特定の薬剤との併用による交互作用によって、肝臓でのフェキソフェナジンへの変換過程で代謝が阻害されると、重篤な不整脈を引き起こすことがあり、実際にこの副作用による死亡例まで報告されました。

 1996年にヘキスト・マリオン・ルセル社がテルファナジンの代謝物であるフェキソフェナジンそのものを製剤化し、副作用のない(テルファナジンを肝臓で代謝する必要がない)薬剤を製品化しました。これが「アレグラ」です。このアレグラの発売によって、アメリカでは、1998年にトリルダンの販売が中止され、日本でも2001年にトリルダンの販売停止処置が取られました。それ故に、翌2002年の花粉シーズンに会社の診療所が処方してくれた花粉症の薬剤は、トリルダンではなくこの「アレグラ」でした。


■ トリルダン から ニポラジン へ

  喉に違和感が生じ始めた2001年の12月末からアレグラの服用を開始しました。ところが、このアレグラは、全く効きませんでした。喉の痛みが酷くなり、自宅近くの耳鼻科の開業医でこのアレグラの他に、抗炎症剤と副腎皮質ステロイドの成分を含有した強力な抗ヒスタミン薬である「セレスタミン」の処方を受けました(p1)一般に、酷い花粉症の症状でも、このセレスタミンを服用すれば、大抵は治まると言われているようですが、全く駄目でした。喉の炎症部分が化膿し、熱まで出てきました。

  その耳鼻科でさらに、セレスタミンと一緒に抗生物質、解熱剤、鎮咳剤、去痰剤など5種類の薬剤を処方してもらい(p2)、ようやく症状が軽減しました。その開業医で、試しにこれを飲んでみますか・・? と処方してもらったのが「ニポラジン」(p3)です。このニポラジン(3mg)を朝晩1錠づつ服用したところ一週間ほどで花粉症の症状が完全に消えました。これ以降、私の花粉症治療薬は、このニポラジンに変わりました。

       
    p1 薬剤リスト1        p2 薬剤リスト2      p3 ニポラジン


■ 第一世代抗ヒスタミン剤 「ニポラジン」

 ニポラジンは、フェノチアジン系のメキタジンを主成分とする第一世代の抗ヒスタミン薬です。眠気、口渇などの他、前立腺肥大や緑内障の持病がある場合には、排尿障害や緑内障の悪化などの副作用があります。確かに睡眠時間が毎日4〜5時間の会社生活を送りながら、このニポラジンを医師の指示通りに、毎日朝晩二回服用していると、自分がメインでない会議では眠りこけてしまうことがありますし、朝、飲み忘れて昼食後に飲んだ場合などは、会議中に口渇で声が出にくくなることもありました。しかし、ニポラジンの薬効は私にとっては絶大でした。花粉症の症状からは、完全に解放されました。
 しかも、毎花粉シーズンに、このニポラジンと付き合っているうちに、この薬の特徴に合わせて服用すれば、服用量を減らすことができるし、副作用の影響も軽減できるということも分かってきました。

 ニポラジンは、薬効が現れるまでの時間が極めて早いという特徴があります。効果発現時期を服用後10〜20分とする薬事資料も存在します。即効性があるので、アレグラと違って、症状が出てから服用しても時間的に十分に間に合います。従って、症状が治まっている間は服用しないという選択肢があり、服用する薬量を抑える(減らす)ことができます。

 通常、耳鼻科の開業医が処方してくれるニポラジンは二週間分ですが、会社の診療所で1ケ月分(3mg×60錠)又は2ケ月分出してもらって、喉に違和感があるとか、鼻水が出るといった症状が出てきたときだけ、服用するようにすると、花粉の飛散量が少ない年の場合などでは、トータルで50錠程度の服用でシーズンを終えることも出来ました。

 また、眠気は服用後20分くらいで現れますから、服用するタイミングを就寝前にすれば、眠気の問題は解消できますし、ニポラジンを睡眠薬代わりに使うこともできます。口渇が出ることがありますので、服用後、就寝前にコップ一杯程度の水分を摂るようにします。今のところ、前立腺肥大や緑内障の持病はありませんので、ニポラジンを服用する上での大きな障害はありません。

 このニポラジンの優れた点は、その薬効だけではありません。薬価が圧倒的に低い、つまり購入価格が極めて安いのです。「医者からもらった薬がわかる本2007」(株式会社法研 2006年7月)によると、アレグラの1錠94.6円に対して、ニポラジンは1錠が僅か9.7円です。リアタイアしてからは、近所の薬局付きの内科医院(耳鼻科ではありません)でニポラジンを1ケ月分まとめて処方してもらっていますが、3割自己負担の健康保険適用で出費は、初診料、診察料を併せて1,500円程度です。最近は、ヒノキ花粉の季節が終わる6月上旬まで私の花粉シーズンが続きますが、前述のようにニポラジンの服用方法を工夫すると、シーズン中に通院は二回以内で済み、花粉症の治療費を1シーズン3,000円程度に抑えることができます。前立腺肥大や緑内障の持病の無い人にとっては、ニポラジンは、十分に選択肢となり得る治療薬であると思います。





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