鹿島槍ヶ岳[2889.1m]/爺ヶ岳[2669.8m]    ルートMAP  


< プロローグ >

 今夏は秀麗な双耳峰で後立山連峰の盟主と呼ばれる鹿島槍ヶ岳(2889.1m)に登ることに年初から決めていた。 鹿島槍
(p1) は20代の頃からの憧れの山であり、昨年の夏に「小蓮華山」の稜線から南方向を眺めたときにその存在感に圧倒された山でもある。 黒部・立山アルペンルートの東側の基点として有名な「扇沢」から柏原新道を辿って稜線にある「種池山荘」の西側のテント場まで登り、ここをベースにして鹿島槍までピストンする算段であれば、老いぼれ爺でもテント泊での山行が可能だろう。

   
    
p1 小蓮華山からの鹿島槍ヶ岳

 ネット情報によると、種池のテント場はスペースが狭く、うまく並べてもせいぜい「20張り」程度で、溢れたハイカーは山荘泊まりを余儀なくされるということなので、混雑を回避できるウィークデイを狙って山行することに決めたが、梅雨明け後も中部山岳地帯の天候は一向に安定せず「3日続きの晴れ」が期待できるのは「盆休み」頃で、それ以降は台風も襲来して、安定した天候は見込めないと言う。やむを得ず出発日の予定を「9月中旬まで」後ろ倒しして、お天道様と相談することにした。


 8月も終わりに近づいた26日になって、奇怪な迷走の果てに本土に再接近する見込みだという台風10号が、東北地方に近づく8/30以降の数日間は、比較的安定した天候が見込まれるとの予報が出たので、8/31(水)に信濃大町まで移動して前泊し、翌9/1(木)に入山することに決めた。

 ところが、台風が寒気を呼び込んだためか・・8/28から日本列島は一遍に秋モードになり、後立山連峰は「種池」の稜線付近で10〜12℃、鹿島槍山頂は5℃との予報が出て、急遽、防寒対策も必要になった。とりあえず私の夏山携行品の定番であるウールの「ベスト」を「長袖セーター」に変更することにしたが、寒さで一睡もできなかった42年前の信濃駒ヶ岳での惨劇が思い起こされて・・、薄手のダウンベストに加えて、テントの床面に敷く断熱材入りのマットを急遽、携行品に追加することにしたため、結局、「水なし」の状態でザッグの重量が13.5kgを超えてしまう羽目になった。さてさて、どうなることやら・・・。


日時:2016年9月1日(木)〜3日(土)    天候:晴れ

コース:
 第1日   扇沢駅 → 登山口 → ケルン → 石畳 → 種池山荘 → テント場(泊)
(9/1[木])   7:18   7:30   8:50   10:00  11:20/11:40   11:41

 第2日   種池テント場 → 爺ヶ岳南峰 → 爺ヶ岳中峰 → 冷乗越 → 冷池山荘
(9/2[金])   5:40       6:30      6:55    7:45   7:55/8:10

       → 布引山 → 鹿島槍ヶ岳山頂 → 冷池山荘 → 種池テント場(泊)
         9:20    10:20/11:00    12:30/13:20     15:40

 第3日   種池テント場 → 登山口 → 扇沢駅
(9/3[土])   6:20     8:45/8:50   9:10



< アクセス >

 8/31(水)のAM10:00過ぎに自宅を出発。夕刻、大糸線の信濃大町駅近くのホテルに投宿する。日暮れ時にホテルから南西方向に500mほど歩いたところに新設されたショッピングモールに買い物に出かける。途中、今回の山行のターゲットである鹿島槍と爺ヶ岳のツーショットが撮れる絶好のポイントを見つける。生憎、今日は見通しが悪く、鹿島槍の姿も霞んでいる。


【 第一日 】

■ 扇沢へ

 AM6:15発の扇沢行きの一番バス(繁忙期は5:30発のバスもあり)に乗車するために5:50頃にホテルを出る。ホテルの西側の民家の間から鹿島槍が鮮やかに見えたので、前述の撮影ポイントに移動して朝の陽光を一杯に受けた爺ヶ岳と鹿島槍のツーショット(p2)をカメラに収める。今日は期待したとおりの絶好の山行日和になりそうだ

  
   
p2 信濃大町からの鹿島槍ヶ岳


 駅前ロータリーのバス停の横に設置された切符売り場で扇沢までのチケット(¥1,360)[注1]を購入してバスに乗り込む。乗客は私を含めて4人で、いずれもハイカーである。途中、大町温泉郷でアルペンルート巡りと思われるツアー客が数人乗り込んで、6:50頃に関電トロリーバスの扇沢駅(p3)前に到着する。扇沢駅は1997年夏の「家族揃っての最後の信州旅行」以来、19年ぶりだ。
[注1] 7日間有効の往復割引切符(¥2,500)があるが、この切符では、復路に大町温泉郷で途中下車ができない。

       
         
p3  扇沢駅


■ 登山口へ

 扇沢駅北端に設けられた水場の近くで身支度を整え、爽健美茶の600mlボトルと水1リットルをザックに詰め込み 7:18 過ぎに出発する。扇沢駅前の駐車場の北側の道路(p4)を東方向に下り、さらに第6ポイントスノーシェッド(雪崩避け)[p5]を潜る。ウィークデイのはずだが、道路脇の駐車場は満杯だ(p6)。シェッドを抜け、左手から篭川に流れ込む「扇沢」に架かる鉄橋(p7)を渡ると、すぐ左手の金網フェンスに「ここは扇沢出合(柏原新道入口)」という説明が併記された「←種池山荘・爺ヶ岳」の黄色の道標(p8)が掛けられている。ここが登山口(p9)だ。扇沢駅から12分弱である。


p4 駐車場を東方向に下る  p5 シェッドを潜る     p6 満杯の駐車場      p7 鉄橋を渡る


p8 柏原新道への道標     p9 登山口の道標


■ 柏原新道を往く

 砂防工事中の扇沢の東岸(p10)を北方向に歩くと直ぐに、岩を埋め込んで整備した歩き易い山道(p11)になる。ここから、種池山荘までの標高差約1,100mの長い登りが始まる。山道は自然林に囲まれ、東側からの日差しが遮られてありがたい。気温は21℃、いきなりの大汗は避けられそうだ。15分ほど歩くと、あたりにモミジの大木が目立つようになる。秋には素晴らしい紅葉が楽しめるのだろう。長丁場なので、立ちんぼ休みを繰り返しながらノンビリと歩を進める。

      
    
p10 扇沢沿いを進む       p11 歩き易い山道


 柏原新道は種池山荘のオーナーである柏原正泰氏が50余年前に自らツルハシやスコップを手にして独力で開いた登山道であり、現在でも種池山荘のスタッフが維持整備にあたってくれているという。昭文社の50,000分の一地形図によると、柏原新道の前半部分は、標高1,300余mの登山口から1,917mピークの西側まで、尾根筋をほぼ直線的に上っているが、実際の登山道は、ほど好い傾斜でジグザグに北方向に延びており、心臓破りの・・と形容しなければならないような急勾配のポイントはない。道幅にも余裕があり、足下は堅固で浮石なども少ない。足下が不安定な区画には木製、又は金属製の階段道(p12)(p13)が設けられて安心である。「北アルプスで最も歩きやすい道」というネットでの評価は確かに頷ける。

      
     
p12 木製の階段道       p13 金属製の階段道


 1.5リットル強の飲料水を加えたザッグの総重量は15kgを超えているが、昨晩しっかり睡眠をとったためか辛さは感じない。40分ほど歩くと東側が開けたポイント(p14)があり大町市街が望める。背中が汗でじっとりと濡れて、漸く調子が出てくる。

       
         
p14 東方向が開ける


 やがて南方向も開けて蓮華岳(p15)から針ノ木岳方向に東西に伸びる稜線が姿を現し、右端に針ノ木岳とズバリ岳(p16)、さらに右手の木立の向こうには赤沢岳 (p17)も姿を見せる。ここからは、出発点の扇沢駅(p18)も指呼のうちだ。扇沢駅から丁度、1時間である。

  
  
p15 蓮華岳の稜線       p16 針ノ木岳とズバリ岳        p17  赤沢岳


  
p18 扇沢駅が見える


 台風一過後の入山なので、下山するハイカーに遭遇することはないだろうと予想していたが、ここまで既に4人のハイカーとすれ違う。柏原新道が北アの人気ルートであることを再認識する。


■ ケルン

 登山口から1時間15分ほど歩くと、左手が深い谷になった一画(p19)が現れ、南西方向が大きく開けて蓮華岳から針ノ木を経て岩小屋沢岳に延びる雄大な稜線(p20)の全貌が確認できる。いよいよ来たな・・の思いが湧いてくる。ここを通過すると、岩を積み重ねた小さなケルン(p21)がある。ケルンからも暫く左手が谷になった道幅が狭い区間(p22)が続き、この一画を慎重に通過すると、北側の稜線上に遠く赤い屋根の種池山荘(p23)が見えてくる。


 
p19 崖沿いの登山道           p20   南西方向を望む

  
  
p21 ケルン       p22 左手が崖の山道    p23 種池山荘が見える


 「駅見岬」の標識が架かったポイントからは南側が大きく開け(p24)、北側の稜線も益々近づき、山荘(p25)も大きくハッキリ見えてくる。
           
           
p24 駅見岬から南を望む      p25 稜線上の山荘


■ 石畳
 「一枚岩」(p26)の標識から15分ほどで登山道に無数の岩を敷き詰めた(p27)「石畳」(p28)と呼ばれる一画に至る。岩は平坦な面が地表面に沿うように丁寧に並べられていて、昨夏歩いた「栂池→白馬大池」ルートの岩上歩きに比べれば、はるかに歩き易い。先行していたハイカーの皆さんに追いついたためか、あたりが休憩中のハイカーだらけになる。

      
     
p26 一枚岩        p27 石畳の登山道      p28 石畳の道標


 石畳を通過すると、「水平道」(p29)や「水平岬」(p30)といった名前がつけられた上り勾配の緩やかな区間に入る。地形図を眺めると、登山道は爺ヶ岳から南方向に延びる稜線の西側斜面に沿って反時計回りで進んでいる。北側の稜線(p31)が一遍に近づいてきたように感じる。

      
    p29 水平道         p30 水平岬の登山道      p31 稜線


■ ガレ場
 数人のハイカーが登山道脇に並べられた岩に座って休憩をとっているエリア(石ベンチ[p32]と呼ばれるポイント)を通過すると、左手から枯れた沢が降りてアザミが群生するポイント(p33)に至る。「アザミ沢」の標識が立てられている。  

      
    
p32 石ベンチの道標       p33 アザミ沢


 ガレた一画(p34)を通過すると、登山道脇に「通過注意」の表示板があり、左手が崖で右手の斜面(p35)が激しくガレたエリアに入る。「柏原新道で最も注意が必要」とネット情報でも有名なガレ場に入ったようだ。4人組みのシニアのハイカーグループが「お先にどうぞ」と道を譲ってくれたので、滑落しないように、そして右手の斜面(p36)からの落石にも気をつけながら、道幅が極端に狭くなったガレ場(p37)を一気に通過する。下山時はこのガレ場が下り勾配になるので、一層の注意が必要だろう。


  
p34 ガレた一画     p35 ガレ場(T)       p36 ガレ場(U)      p37 ガレ場(V)


■ 富士見坂/鉄砲坂
 ガレ場を通過してほっとする間もなく、今度はやや厳しい上り勾配(p38)になる。ここから標高差約200m強の上りが続く。登山口から3時間20分、丁度、疲労が溜まってきたところで、この登りは少しばかり堪える。「富士見坂」(p39)、「鉄砲坂」(p40)と、約30分強の登りが続き、ここでとうとう大汗をかいてしまう。下山するハイカーからの「あと一息ですよ・・」、「もう直ぐそこです」の激励の声がやたら耳に響いて来た頃、漸く前方の坂の上に種池山荘の赤い屋根(p41) が現れる。


 
p38 勾配の厳しい山道   p39 富士見坂       p40 鉄砲坂       p41 種池山荘が見える


■ 種池山荘
 種池山荘(p42)前はチングルマの一大群生地として知られているが、季節はもう9月で、チングルマの代わりに「ヤマハハコ」(p43)がハイカーを迎えてくれる。扇沢駅から丁度、4時間。かなりノンビリ歩いたつもりだが、昭文社の「山と高原地図」に記載されたコースタイムどおりに歩けたようだ。

      
      
p42 種池山荘        p43 ヤマハハコ


 山荘前のベンチでザックを降ろし、早速、山荘で缶ビール(キリン一番搾り \550)を調達して喉を潤し、つかの間の「至福のとき」を楽しむ。次々に到着するハイカーでベンチは、いつの間にか満杯になっている。山荘前は携帯がつながるので、N子に「無事到着」のメールを発信する。

 稜線はガスが出ていて東方向の爺ヶ岳(p44)も霞んでいる。一息入れたあと山荘でテント泊の手続き(\700/泊 連泊の場合、二泊目は\500)をして、テント場に向かう。

     
       
p44 ガスに霞む爺ヶ岳


■ 種池テント場
 種池のテント場(p45)は、山荘から西に100mほど歩いたところにある。針ノ木方面に向かう縦走路のすぐ脇の稜線上にあり、南北と西側は木立があり、強風を適度に遮ってくれそうだ。グラウンドは比較的柔らかい土で、ペグは打ち易く、表面の傾斜や凹凸もほとんど無く、落ちている石ころの類も少ない。木立に囲まれているためか、3年前にはクマが現れて、テント場が一時閉鎖になったという。

 水は山荘で購入でき1リットル\150である。トイレは山荘に付属した「外用」を使う。男用×1、男女兼用×2で、無人のチップ制である。比較的清潔に維持されているが、使用したペーパを下に落とすことが厳禁の「コリア・チャイナ方式」なので、使用するにあたってはそれなりの覚悟が必要だ。

 早速、テント(p46)を設営して、「カレーうどん」の昼食とする。昼食後、山荘の東側に回って鹿島槍が見えるかどうか確認するが、霧が掛かって全く見えない。テントの中でウトウトしていると、すでに夕刻。本日のテント場は「9張り」らしいが、全員が「お一人様」だという事実を知って仰天する。一つのテントに2〜3人が川の字になって寝た私たちが未だ若かった時代の山行は、遠い昔話になってしまったようだ。お陰でテント場では、私と同年輩らしい「ブツブツ爺サマ」の独り言のほかは、話し声は全く聞こえず、静かな夜を過ごすことができた。

          
      
p45 種池テント場          p46 本日の宿泊所


 夜半に満天の星空を期待してテントの外に出てみるが、辺りは白いガスに覆われた幻想的な雰囲気。にわかに「クマと鉢合せになったら・・」の恐怖心が湧いてきて、山荘のトイレまでの道のりが異様に長く感じられた。


【 第二日 】

 種池のテント場も朝は早い。AM2:00過ぎにはゴソゴソという音が聞こえ始めて目が覚めてしまう。いつもどおり「4:00過ぎまでは・・」とウトウトを決め込んで寝袋の中で丸くなる。テント内の気温は15℃。辺りが白み始めた4:30過ぎに起き出して、ドライフードの牛飯と味噌汁で腹ごしらえをして、前夜に鹿島槍までのピストン山行に必要なものだけを詰め込んでおいたザッグを担いで出発する。時刻は5:40だ。


■ 爺ヶ岳へ
 朝靄が掛かる稜線の登山道(p47)を東に進んで、爺ヶ岳を目指す。霧が深く(p48)左手遠くに見えるはずの鹿島槍どころか、目の前にデンと座っているはずの爺ヶ岳南峰さえ全く見えない。ところが、その僅か2分後、まるで手品師の仕掛けにでもかかったように、辺りを覆っていた霧が消え去り、左手の北方向に、朝の陽光で東側斜面がキラキラと輝く鹿島槍ヶ岳の秀麗な姿(p49)が現れる。そして前方には三つの頂を連ねた爺ヶ岳(p50)が忽然と姿を現す。

 
 
 p47 爺ヶ岳への登山道     p48 深い霧       p49 朝日を受けた鹿島槍ヶ岳

 
        
p50  爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳へ延びる稜線


 テント場を後にして40分、爺ヶ岳南峰の西側斜面を登る途中で後方を覆っていた霧も晴れて、立山連峰(p51)の巨大な岩塊が姿を現す。さらに南方向に目をやると、蓮華岳から針ノ木岳に延びる稜線(p52)の左手後方の雲海上に槍・穂高連峰(p53)が浮かんでいるのがはっきり確認できる。

 
     
p51  立山連峰           p53 雲海に浮かぶ「槍・穂高連峰」


         
p52  南から西方向の展望


 雄大な展望に見とれて、足が完全に止まってしまっている自分に気がつく。再び、陽光が眩しい岩だらけの登山道(p54)を爺ヶ岳南峰を目指して進む。振り返ると雲海が一段と低くなって、三年前に山頂を踏んだ薬師岳も姿を現す(p55)。大パノラマを楽しみながらテント場から50分を要して爺ヶ岳南峰(p56)に到着する。ここからは鹿島槍への稜線道(p57)が鮮やかに確認できる。


p54 爺ヶ岳南峰への登山道  p56 南峰山頂    p57 爺ヶ岳南峰からの鹿島槍


             
p55  爺ヶ岳南峰から南・西方向を望む


 南峰からはいったん下って(p58)、中峰に向かう。途中、中峰をパスして直接「冷池山荘」を目指すトラバース道(p59)との分岐があるが、この分岐で右手に進んでゴロゴロ道を登ると、6分ほどで爺ヶ岳中峰の山頂(p60)に到達する。振り返ると、種池から歩いてきた稜線道(p61)が鮮やかに眺められる。立山連峰の中腹を覆っていた霧も晴れて、ズッシリとした岩塊の全容が姿を現す。

   
  
p58 爺ヶ岳中峰へ      p59 中峰への分岐     p60 中峰の山頂

 
   
p61 種池からの稜線道


■ 冷池山荘へ
 爺ヶ岳中峰からは再び下り、爺ヶ岳北峰の中腹のハイマツに覆われたエリアを抜ける。この辺りは雷鳥の生息地として知られているが、未だ就寝中なのか雷鳥の姿は見えない。仁科三湖側からのガスがいつの間にか勢いを増して、冷池山荘も雲海に消えてしまう(p62)
               
                
p62 雲海に包まれる稜線道

 後方の爺ヶ岳(p63)は鮮やかに望めるが、鹿島槍への稜線道はいよいよ雲海に突入する(p64)。中峰から一方的に下ること50分、テント場からは約2時間で赤岩尾根への分岐点である「冷乗越」(p65)に到着する。

     
  
p63 南方向を望む      p64 雲海に突入する     p65 冷乗越の道標


 乗越から登山道は上り勾配になり、太陽が肉眼で見えるほどの深いガス(p66)の中を冷池山荘を目指す。稜線道は樹林帯に入り、厳しい勾配の木組みの階段道(p67)を登り切ると、前方に冷池山荘(p68)が現れる。冷乗越から10分強である。ここで小休止。冷池山荘の外用トイレは、山荘北側の仮設階段(p69)下にある。ここも種池山荘と同様の無人のチップ制である。

  
p66  深い霧      p67 階段道を登る      p68 冷池山荘     p69 トイレは階段下に


■ 布引山へ
 山荘から5分ほど登ると、稜線上に地肌が露になった広いスペース(p70)に出る。ここが冷池のテント場だ。後立山連峰を縦走する場合には便利な位置にあるが、木立に囲まれた種池のテント場と異なり"吹き曝(さら)し"なので、悪天候時には猛烈な風が吹きつけそうだ。テントは東西の端に二つ残されている。

  
   
p70 冷池テント場


 テント場からは長い稜線道(p71)(p72)(p73)を北に辿って、鹿島槍を目指す。仁科三湖側から吹き上げる風が涼しい。時折、ガスが晴れると、西側に立山連峰(p74)、その左手に薬師岳(p75)の山塊が望める。冷池山荘から丁度、1時間弱で登山道は雲海を完全に抜け出し、南から西方向に大展望(p76)が広がる。

     
  
p71 稜線道(T)        p72 稜線道(U)        p73 稜線道(V)

   
    
p74  立山連峰          p75  薬師岳

 
            
p76   南から西方向を望む


 この辺りは8月初旬にはお花畑になるエリアであるが、この初秋の季節にはお花の数も激減するようだ。道すがらイワギキョウ(p77)やイワツメクサ(p78)を見つけてほっとする。

      
     
p77 イワギキョウ       p78 イワツメクサ


 ハイマツに覆われたゴロゴロ道(p79)を進むと、漸く鹿島槍の山頂(p80)が見えてくる。南方向の雲海の向こう側には爺ヶ岳(p81)が望める。冷池山荘から1時間10分で布引山の山頂(p82)に至る。ここから眺める鹿島槍の南峰(p83)は美しい。ここで小休止。

   
  
p79 稜線道(W)      p80 鹿島槍山頂が見える  p81 雲海の向こうの爺ヶ岳

   
   
p82 布引岳の山頂     p83 布引山頂から鹿島槍を望む


■ 鹿島槍へ
 布引山から鹿島槍に向かう稜線道沿いはイワヒバリ(p84)の生息地のようで、すばしこい動きで、長丁場で少しばかり飽きてきたハイカーたちの目を楽しませてくれる。

   
     
p84 イワヒバリ

 布引山からは、あと一息・・に思えた鹿島槍だが、山頂へ向かう石(p85)だらけの登山道は延々と続く(p86)(p87)。南から西方向に大きく開けた大展望(p88)を楽しみながら、立ちんぼ休みの頻度を増やして、ゆっくり歩を進める。ここからは薬師岳(p89)も鮮やかだ。振り返ると布引山から延びてくる稜線道(p90)が美しい。登山道の上り勾配が厳しくなると、鹿島槍の山頂は近い。

   
  
p85 石だらけの登山道   p86 鹿島槍へのアプローチT  p87 鹿島槍へのアプローチU

 
            
p88  南→西方向の大展望

     
     
p89  薬師岳           p90 布引山からの稜線道


■ 鹿島槍山頂
 布引山から1時間弱、いよいよ山頂(p91)に到着だ。冷池山荘に泊まったハイカーが丁度、下山したタイミングらしく、広い山頂(p92)にハイカーは5人ほど。静かな山頂を楽しめそうだ。山頂西側の岩上に腰を下ろして、1本145kcalのSOYJOYバーを喰らいながら1年ぶりの大展望を楽しむ。

            
     
p91 山頂表示柱        p92 山頂広場(後方は立山連峰)


 快晴の山頂からは、遠く南方向の槍・穂高連峰(p93)から直ぐ西側の立山連峰(p94)まで、北アルプスの代表的な山々(p95)が一望できる。三角点(p96)が埋め込まれた山頂の北側には、鹿島槍の北峰(p97)がそそり立ち、その左手には後立山の山々(p98)が連なる。昨年歩いた小蓮華山の稜線も遠望できる。ここで大休止。

    
     
p93 槍・穂高連峰          p94 立山連峰

  
               
p95  鹿島槍山頂から南・西方向を望む

      
     
p96 三角点        p97 鹿島槍北峰       p98 山頂から北方を望む


 鹿島槍山頂は時折、ガラ携の電波強度が三本になるので、N子に写真添付の「無事到着メール」を発信してみるが、写真が重すぎたようで失敗。


■ 種池へ下山する
 種池山荘からのハイカーグループが次々に到着して山頂が騒がしくなってきたところで、下山することにする。 冷池山荘まで下ったところで「生ビール」の看板が目に入ってしまい、ラーメン(¥400 但し、カップラーメンです)を肴に、キリンの一番搾り(¥900)[p99]で本日二度目の大休止。冷池山荘前は電波状態が安定しているようで、漸く「ガラ携」でN子に写真を送ることに成功。山荘で飲料水(注2)を補充して出発する。
(注2) 冷池山荘では、100ml刻みで飲料水を販売してくれる。(¥15/100ml)

      
       
p99 冷池山荘の生ビール


 生ビールが少々、脚にきてしまったようだが、爺ヶ岳への上りも何とかクリアして、15:40に種池のテント場に帰着。丁度、10時間の絶景三昧のピストン山行でした。

 二日目のテント場は週末の金曜日だが、テントは12張り止まり。この日も全員がお一人様でした。



【 第三日 】

■ 扇沢駅へ下山する

 夜半に強風が吹き、少し雨もあったようだがテント周りは異常なし。テントを撤収してAM10:00扇沢駅発の大町行きバスに乗車することを目標に 6:20過ぎにテント場を出発する。

 土曜日なので、大勢の入山するハイカーとすれ違うことになるだろうと、覚悟していたが、下山を始めて10分ほどで早くも上りのハイカー(単独行の山ガールさん)に遭遇して仰天する。未だ夜が明けないうちに扇沢を発ったようだ。

 「石畳」あたりからは、上りのハイカーだらけになる。道を譲って待つ間に体中から汗が噴き出す。すれ違ったハイカーは300人以上いただろうか・・? あまりのハイカーの数の多さに少しばかりムキになってしまったようで・・、柏原新道の登山口までコースタイム 2時間45分の下り道を、休憩時間を含めて 2時間25分で降りてしまう。結果、想定以上の大汗をかいてしまう。

 扇沢駅では、まず自販機で缶ビール。さらにアクエリアスで水分補給していると、タイミングよく予定より一本早い 9:30発のバスが到着する。


■ 大町温泉郷へ
 大町温泉郷で途中下車(¥1,010)して、温泉施設「薬師の湯」(p100)の大浴場(入浴料¥700)で汗を流す。入浴後の生ビール(¥500)は格別。肴のモツ煮(¥450)や昼食代わりのカレーライス(¥600)も素朴な味わいで楽しめました。

     
       
p100 薬師の湯


< エピローグ >

 足腰が弱ってきた爺サマでも手軽に、しかも比較的安全に北アの素晴らしさを満喫できる良いコースです。帰路に大町温泉郷で汗を流せるところも気に入りました。人気のコースゆえに、トップシーズンには人だらけになるようですので、人嫌いの「お一人様」にはお勧めできません。



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