< お湯が出ない >
それは武田尾の亦楽山荘で素晴らしい紅葉狩りを愉しんだ翌日だった。2008年2月に設置して以降、14年近く
"無故障" で使い続けてきたノーリツ製の給湯器[GT-2028 SARX](p1)(p2)が、突然、"点火しない" 不具合を
発生した。
p1 給湯器(ノーリツ GT-2028) p2 給湯器の銘板
浴槽を掃除しようと、いつものようにリモコン(p3)の運転ボタンをON(入)にして給湯栓をお湯側で全開にするが、
リモコンの燃焼表示灯が点灯しない。もちろん蛇口から出て来るのはお湯ではなく水だ。ひたすら水が出続けている。
取扱説明書を引っぱり出して「故障・異常かな? と思ったら」のページを開き「給湯栓を開いてもお湯が出て
こない」の欄に記載されているチェック項目を一つひとつ全て確認するが、該当する事象は存在しない。どうやら
不具合の原因は給湯器本体にあるらしい。
p3 給湯器のリモコン(浴室用)
給湯器の耐用年数(設計標準使用期間)は10年と言われているので、これをはるかに越えて使用されている我が家の
給湯器が "ご臨終" を迎えるのは時間の問題だったのかも知れない。
ノーリツのコールセンター[(株)エヌティーエス]に電話しても、やって来るサービスマンは修理をせずに本体の
交換(買い換え)を勧めるだろう。しかし、給湯器全体を交換するにしてもタイミングは最悪だ。報道によると、
コロナ禍の影響によるサプライチェーンの混乱が半導体部品を始めとする電子部品の地球規模での需給逼迫をもたら
しており、その煽りで給湯器でも納期遅延のトラブルが頻発しているという。サービスマンが奨める「本体の交換
処置」を選択しても、交換用の給湯器が入着するまで長期間の待機を余儀なくされる羽目になるかも知れない。
とんでもないタイミングで "ご臨終" となったものだ・・ などと、雑念が頭を駆け巡る。
不具合の原因が給湯器本体の点火系統だけにあるのだとすれば、過去に旧式の風呂釜1台、石油ファンヒーター
2台の "点火系の故障" と格闘した経験があるので、自力で対応が出来るかも知れない・・と、とりあえずPCの前
に座り込んでネット情報を漁ってみる。
< ネット情報 >
ネット上にはノーリツ製を含めて給湯器の不具合とその修理に関する情報が溢れていた。総括すると、こんな具合だ。 (1)給湯器の不具合は使用期間が10年を越えると増えてくる。
(2)不具合のほとんどが点火系で発生し、原因は部品(点火プラグとイグナイター)の経年劣化である。
(3)従って上記(2)の場合、点火プラグとイグナイターを交換すれば修理できる。
(4)ノーリツ製給湯器(GT-2028)用の点火プラグとイグナイターは市販されていてネットの通販サイトでも購入できる。
(5)GT-2028の場合、点火プラグとイグナイターの交換修理は自己責任でのDIYによっても比較的容易に実施できる。
< 部品調達 >
不具合原因が素人には対応が困難なポンプ系や制御系ではなく、点火系にあるのは間違いないので、とりあえず
点火プラグとイグナイターを交換してみることにして、ネット情報を参考に通販サイトで部品を調達する。
点火プラグは SB-P7540、イグナイターは EM-UJ004 、いずれもパロマ製。使い慣れたアマゾンに発注し、価格は
2品目併せて4,700円。(ネット情報には2,000円程度とあったが、コロナ禍の影響か・・だいぶ高くなっている)
入着は翌々日の見込みだ。
さて、本日の風呂をどうするか? 結局、車を走らせて近くの「三田温泉 寿の湯(750円/人)」に向かう。
休日のためかコロナ禍でも大混雑。温泉にノンビリと浸かって・・とはいきませんでした。
< 交換修理 >
ネット上には、何故か給湯器の点火系統の構成や動作原理についての詳しい解説が載っていない。爆発や火災の
危険が伴う機器に関して、素人に中途半端な知識を与えたくないというメーカー側の意図なのだろうか・・。
十分な知識が無いまま交換修理を行うのは不安だが、ここは "突撃" だ。部品(p4)(p5)が入着して直ぐに交換修理
にかかる。
生憎、点火系の修理には最悪の "降ったり止んだり" の天気だが、今日は何としても自宅風呂に入りたいので
ナウキャストの降水短時間予報で雨雲の切れ間を狙って作業をすることにする。
p4 交換用部品(1) p5 交換用部品(2)
(1)まず給湯器(p6)への電源供給用のコンセント(p7)から電源プラグを抜く。次に給水管とガス管の元栓(p8)(p9)
を閉じる。
p6 給湯器本体と配管など p7 電源プラグを抜く p8 給水元栓を閉める
p9 ガス元栓を閉める
(2)給湯器のカバー(p10)を外す。カバーを留めている4箇所のネジを外してカバーを取り去ると、点火部(p11)は
中央部にあり点火プラグとイグナイター(p12)が確認できる。点火プラグの絶縁ボディが経年劣化してその絶縁
材の白色のカス(粉末状)がプラグ の下側に堆積しているのも見える。
p10 カバーを外す p11 給湯器の内部 p12 点火部
(3)イグナイターの下側に差し込まれて(接続されて)いる信号配線のソケット[メス側](p13)を、爪を押しながら
下方に引っ張って外す(p14)。
p13 信号配線のソケットを外す p14 外したソケット
(4)イグナイターを右方向に水平にゆっくりスライドさせながら(p15)引っ張って取り外す(p16)。
p15 イグナイターを外す p16 取り外したイグナイター
(5)点火プラグの青色ケーブルのソケット(p17)を斜め左下方向に引っ張って点火プラグの電極から外す(p18)。
p17 青色ケーブルを外す p18 外した後のプラグとソケット
(6)点火プラグを保持している金属プレートを留めているネジ(2箇所)(p19)を外して、本体側のカバープレートから
金属プレートを外し、さらにその下側に挿入された絶縁用の白色シートと点火プラグ(p20)を取り外す。
また、金属プレート上に堆積した絶縁材のカスを除去する(p21)。
p19 金属プレートを外す p20 外した点火プラグ p21 外した金属プレート
(7)金属プレートの下側に絶縁用の白色シート(新品)を配置して、点火プラグ(新品)を矢印の方向(p22)[注]から
金属プレートの穴に挿入し、さらにこれを(6)と逆の手順でネジ(2箇所)で本体側のカバープレートに留める
(p23)。 [注] 矢印の方向でないと、うまく挿入できない。
p22 挿入方向 p23 交換完了した点火プラグ
(8)イグナイター(新品)を(4)とは逆の手順で、右側から左方向に向かってスライドさせて取り付ける(p24)。
このときイグナイターのY字型電極(p25)が金属プレートを確実に挟み込む(p26)ようにする。
p24 イグナイターを取り付ける p25 Y字型電極 p26 電極にプレートを挟む
(9)イグナイターへの信号配線のソケットと点火プラグの電極への青色配線ケーブルのソケットをそれぞれ(3)、(5)
と逆の手順で接続する(p27)。
p27 配線ケーブルを接続する
(9)(2)と逆の手順でカバーを取り付ける(p28)。
p28 カバーを取り付ける
(10)(1)の電源プラグをコンセントに差し込み、給水管・ガス管の元栓を元通りに戻す。
< 修理後の動作確認 >
リモコンの運転ボタンをON(入)にして、給湯栓をお湯側で全開にすると、数秒後にリモコンの燃焼表示灯が点灯し、
蛇口から勢いよく放出されていた水は温かいお湯に変わりました。幸運にも交換修理は成功したようです。
給湯器内部の清掃、写真撮影、電気的/物理的な確認等を含めて作業時間は約30分。工具はプラスドライバーが
必須で、これだけで作業は完了できます。私は他にテスター、拡大鏡、ハンディ掃除機、セロハンテープなどを使用
しました。
< その後 >
修理後、約1ヶ月が経過しましたが給湯器は支障なく動いています(p29)。我が家で未だ現役で使用している家電品
(照明器具、換気扇、扇風機などの小物を除く)の寿命ランキングのベストスリーは、
1位 電子レンジ(三菱) 42年(ただし、オーブン機能は既に喪失)
2位 洗濯機(三菱) 20年(修理1回)
3位 冷蔵庫(松下) 16年
ですが、今回の修理で、この給湯器は "屋外設置" であるにも拘わらず寿命が15年を越えるのは確実のようです。
これからは、「私か、給湯器か」どちらが先に "くたばる" かの競争です。
p29 燃焼表示灯が点灯
Top Page
|