蘇武岳[1074.4m]  所在地:兵庫県豊岡市  地形図:1/25000 栃本     ルートMAP     



< イントロ >


  氷ノ山(10/29)、瀞川山(11/1)と紅葉の北但馬の山に魅せられてしまった。初秋を思わせる暖かい秋晴れが続いているので、一昨日、瀞川山から眺めた蘇武岳(p1)を歩いてみることにする。ガイドブック(注1)にあたると、神鍋高原の旧名色スキー場から登山口まで林道を歩いて山頂を目指ざすルートが一般的な由。祝日ゆえに山頂の独り占めはとても無理と思うが、クマの目撃情報もある山なので他のハイカーの皆さんに露払いをしてもらう算段で9:30AM到着を目標に自宅を出る。  (注1) 兵庫県の山(山と渓谷社)[2009年5月1日 初版第2刷]
 

 日時:2011年11月 3日(木)[祝日:文化の日]    天候:晴れ、時々曇り

 コース: 旧名色スキー場

      第6駐車場   →  林道分岐  →   登山口   →  蘇武岳 山頂   →  駐車場

        9:20         9:50         10:50        12:20/13:00       15:10



< アクセス >

 カーナビを「名色スキー場」に設定して、舞鶴若狭自動車道の春日ICから北近畿豊岡自動車道に入って北上する。山東ICで降りて、国道427号、国道9号を経て、道の駅但馬楽座の手前で国道312号に入り、さらに北進する。江原から国道482号に入って西へ走り、神鍋高原を目指す。この道は子供たちがまだ小学生の頃に家族スキーで何度か走った道で懐かしい。祝日のためか紅葉を求めての・・? 神戸ナンバーの車が数珠繋ぎだ。但馬ドームの銀白色の屋根が見えてカーナビが左折を指示する。道路右手にパラグライダー愛好者の皆さんの駐車場があり、その少し先の道路左手にある広大な名色第六駐車場の跡地に駐車する(p2)。駐車場の南側には、2009年に閉鎖されたという名色スキー場のゲレンデ跡(p3)が広がる。道路を挟んで駐車場の反対側(北側)には、スキー場時代のトイレ(p4)が残されており、今でも清潔な状態でメインテナンスされている。ありがたいことです。先着車輌は無し。無線愛好家の放置車両らきし軽自動車が一台置かれているだけだ。クマさんの露払いは自分でやらざるを得ないようです。

     
   
  p1  瀞川山からの蘇武岳     p2 旧名色スキー場の駐車場   p3 旧名色スキー場のゲレンデ    p4 駐車場北側のトイレ 


< ゴーイングアップ >

■ 林道歩き

走ってきた道路を東方向に40mほど戻ると、道路脇に「蘇武岳登山道」と表示した道標(p5)があり、ここから林道(p6)に入る。山頂まで片道8.2km、往復16.4kmの山行のスタートだ。稲葉川にかかる城山橋を渡り、スギの樹林帯と見える山に入る(p7)。林道は大型ダンプ一台が何とか通過できる道幅で、一部の区間はコンクリート舗装されている。現在でも舗装工事が進められているようで大型のコンクリートミキサー車が通る。基本的にスギの植林帯を抜ける林道だが、道路脇には広葉樹が植生していて、秋色(p8)が林道歩きの退屈さを癒やしてくれる。

    
   p5  蘇武岳への林道の入り口     p6  舗装された林道     p7  山に向かう林道       p8 林道沿いの秋色


名色から2.2kmの地点にヘアピンカーブの林道の分岐(p9)があり、ここで右手に折れる。ここから先は、作業道のようで、工事用車輌以外は立入禁止の掲示板(p10)が置かれている。カーブの道路端にハイカーのものと思われる小型の乗用車が駐車している。先行のハイカーがいるようだ。写真を撮っていると、林道を上がってきたシニアのハイカーに先を越される。これで露払いは少なくとも二人になった。


 追い越していったハイカーはいつの間にか姿が見えなくなる。もの凄いスピードだ。ときおり林道の両脇が自然林(p11)になって気持ち良く歩くことができる。前方には備前山の山頂付近にあるアンテナ塔(p12)が現れる。

    
    p9   林道分岐ポイント      p10 車輌立入禁止の標識    p11 自然林を抜ける林道    p12 備前山頂付近のアンテナ
 


名色から3.7kmの地点の道路端にハイカーのものと思われる神戸ナンバーのプリウス(p13)が駐車している。轍の跡から見てここは大型ダンプが方向転換に使っているスペースのようだ。立入禁止の掲示を無視して作業道に侵入して、しかもここに停めるのは明らかなマナー違反です。ハイブリッド車に乗る燃費に敏感なこのハイカーは、自らの消費エネルギーの抑制にもご執心なのでしょうか・・。

林道には数台のブルドーザが置かれている。中にはエンジンを掛けたままのものもある。突然、前方にコンクリート舗装工事現場(p14)が現れる。狭い林道を大型のコンクリートミキサー車が往来していた理由はこれだった。塗ったばかりのコンクリートを踏まないように、ここは路肩歩行です。

       

      p13  林道脇の駐車車両       p14 林道のコンクリート舗装工事


 1964年に日本の林産物貿易が自由化されてから林産物に対する関税率は年毎に低下し、とくに1993年のUR合意以降は、年率30%で関税率が引き下げられ、現在では丸太がゼロ%、製材でも0〜6%という低関税率が適用されている。15年前まで10兆円を優に越える産業規模だった日本の林業は、外国産の安価な木材の流入によって一気に衰退してしまった。伐採し、売却しても利益が出ないのは明らかであるにもかかわらず、切り出したスギ・ヒノキを運搬するためという大義名分の下に、税金を使って立派な林道を造成する。地方の山村の経済を支えているのは、林業ではなく林道工事などの公共工事なのだという実態が良く分かる。

 森林の保全は、日本にとって死活問題であり、山を守り、里山を維持するために税金を投入することには何の異論もない。しかし、この現状は異常だ。林業が商売として成立し得ないのであれば、いっそのことスギ・ヒノキを全て取り払って、保水能力の高い広葉樹に植え替えて、その森林を維持するための人々を税金で雇用するという姿の方が、はるかにスッキリする・・。

 林産物を含めて関税障壁は、ここ20〜30年の間にとうに撤廃されて、既に開国状態にあるにもかかわらず、空き缶(菅)と呼ばれたこの国の無能宰相は、米国に媚びるために「TPPは平成の開国だ・・」などと、平気で嘯いた。政治屋や小役人は、自由化によって林業や畜産業が既に破綻しているのを尻目にTPPは日本の一次産業の体質を強化する絶好の機会となる・・、さあ規模の拡大だ、企業化だ・・などと馬鹿げた持論を吹聴する。

 経営規模を拡大したところで、米豪を相手に競い合うことなどできないことは自明なのに・・。「一次産業はGDPの僅か1.3%を占めるだけで・・トヨタ1社の売上高よりも少ない、この一次産業を救うために企業が国際競争力を失ってもよいのか・・」などと、とんでもないことを言い出す輩さえいる。GDPへの寄与は確かに小さいかも知れないが、日本の国土と文化を守ってくれているのは、棚田を耕しながら、森林の手入れをし、地域の絆を維持し、伝統文化を育んでいるこの山村に住んでいる人々に代表される一次産業に従事している国民だということは、紛れもない事実であるのに・・。


 つまらないことを考えているうちに備前山への分岐(p15)に到達する。地面に置かれた道標に登山口まで300mの表示(p16)がある。

       
       p15  備前山への分岐        p16 分岐ポイントの道標

         

■ 登山口から山頂へ

備前山への分岐からは、林道は緩やかな下りになる。左手に素晴らしい秋色の山肌(p17)が見え、山行気分が一気に高揚して、登山口の林道分岐(p18)に到着する。ここから道標(p19)に従って右手に進んで山に入る。左手がスギ林、右手が自然林の一画(p20)を抜けると、一面黄色のナラ林(p21)の前に出る。凄い! 思わず声が出てしまう。一息入れてから左手の階段の急登(p22)を上る。

                 
        p17  秋色の山肌          p18 登山口の分岐ポイント      p19 分岐ポイントの道標
   

             
          p20  登山道         p21  ナラ林の秋色         p22    階段道の急登


尾根筋の登山道(p23)は明るく、見通しも良く、とてもクマと出会い頭に遭遇するような雰囲気ではない。登山道沿いの樹木は、葉の多くが既に落ちてしまっている(p24)が、山腹のブナやミズナラは、紅葉のピークを迎えていて(p25)、カエデの赤が混じった素晴らしい秋色が続く(p26)

    
    p23  尾根筋の登山道       p24  登山道         p25   山腹の秋色       p26 「赤」が混じった秋色


階段道の急登(p27)を繰り返しながら進むと、右手前方の木立の間から山頂(p28)が見えてくる。さらに進むと山頂の直ぐ北側、西側を抜ける広域基幹林道妙見蘇武線が直ぐ右下に見えるポイント(p29)に至る。アスファルト舗装の立派な林道のようだ。

           
        p27  階段道の急登       p28  木枝の間からの山頂      p29 林道 妙見蘇武線

  

少し薄暗いスギ林(p30)を抜けると、山頂(p31)が姿を現す。右手には林道に降りる登山道(p32)がある。この下の林道に車を停めれば山頂まで5分もあれば到達できる。 

      
     p30 スギ林を抜ける登山道      p31 登山道からの山頂      p32 林道へ降りる登山道


 山頂からは賑やかな声が聞こえてくる。複数のハイカーが先着しているようだ。山頂に向かう途中で左手(南方向)に但馬妙見山(p33)、その右手には藤無山(p34)の山頂が見える。

    

    p33 但馬妙見山(後方)       p34 藤無山(後方中央)



< トップ >

 一等三角点(p35)が埋まる広い山頂(p36)は柔らかい草で覆われて表示が読めなくなった古い山頂表示の木柱(p37)が立っている。男性3名、女性2名のシニアのハイカーが先着している。全員が名色から登ったハイカーのようで、そのうちの一人で私をあっという間に抜き去ったハイカーが「正規ルートで歩いたのは、あんたと俺の二人だけで、ここの皆さんは、みんなインチキだよ」と笑いながら大声で話しかけてくる。「正規ルート」とは林道に車を停めなかったという意味のようです。このハイカーさん、名色からこの山頂まで僅か2時間7分で歩いたそうです。とんでもない韋駄天ハイカーさんです。


 山頂からは南側の一部が木立に隠れるが、ほぼ300°近い大展望を楽しむことができる。特に南西から西方向には、カラマツの向こう側に氷ノ山、鉢伏山、瀞川山、陣鉢山、青ヶ丸、仏ノ尾、扇ノ山など北但馬の名峰が並ぶ姿を見ることができる(p38)
   
       
    p35  山頂の一等三角点       p36  山頂広場          p37  山頂表示柱

   
                                         p38  山頂から「南西→西」方向を望む   


 名色から登ったハイカーの皆さんが下山し、阿瀬渓谷から上がってきたと言う単独行の男性ハイカーと二人だけになり、山名などを教えてもらう。このシニアのハイカーさんは、車に積んでいた自転車を名色に置いてから阿瀬渓谷に回ったそうで、これから名色に降りるとの話。単独行でもこの手を使えば、阿瀬渓谷から名色まで縦走ができるようです。


< ゴーイングダウン >


 帰路、林道の備前山への分岐から備前山の山頂に回って、旧名色スキー場のゲレンデを抜けて名色に降りる道を探すが、踏み跡も見つからずに諦める。山頂下のアンテナ塔の横から薮コキをして元の林道に戻る。帰路の本日一番の赤はこれでしょうか?(p39)

               
  
      
      p39 この日一番の「赤」


< エピローグ >


 登山口から山頂までの尾根筋歩きでの「秋色」は素晴らしく、長い林道歩きのストレスを発散させてくれます。次回は阿瀬渓谷から歩いてみたいと思います。



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