裏六甲 十八丁尾根(瑞宝寺谷東尾根)(兵庫県神戸市)       ルートMAP


 【 山行日時/ルート 】 

   日時:2023年2月9日(木)   天候:晴れ、時々曇り

  ルート:有馬温泉駅→ 林道入口 → 十八丁尾根への取付き → 標高650m小ピーク
        10:15    10:45      11:21         11:54

       → 十八丁山 → 十八丁尾根出口(後鉢巻山北側)
         12:46        13:40

  総時間(道迷い・ルート探索・休憩等の時間を含む): 3時間25分



【 プロローグ 】
 2/6(月)に瑞宝寺谷西尾根を歩いたとき、谷を挟んだ東側に延々と連なる青黒い尾根(p0)の存在感に圧倒された。「これが、十八丁尾根か・・」。帰宅して直ぐネット情報にあたると「急峻かつルートファインディングが必要で初心者には奨められない」コースの由だが、何とか歩けそうな感触を得た。「北の風は強いが降水確率はゼロ」の予報が出ている2/9(木)にこの尾根を辿ってみることに決めた。

     
   
p0 瑞宝寺谷西尾根からの十八丁尾根


 ネット情報によると、十八丁尾根(とはっちょうおね)への取付きポイントにアクセスできる林道の入口が県道51号(宝塚唐櫃線)沿いの "白水峡墓園前バス停" の近くにあるという。有馬温泉から「さくらやまなみバス」に乗車してこのバス停に向かう作戦を立てたが、何故か有馬温泉を午前10時台に出発するバスが無い。やむを得ず、神戸電鉄の有馬温泉駅前からタクシーを使うことに計画を変更する。さて、どんな顛末となるのか。



【 有馬温泉駅 → 林道入口(県道51号沿い) 】
 午前10:00過ぎに有馬温泉駅に到着するも、駅横のタクシー乗り場に待機しているタクシーは無し。神鉄タクシーに電話するが「早くても20〜30分後に到着する」旨の回答。タクシーが使えない場合は「歩く」ことに決めていたので、ここは "想定内" と割り切って林道入口まで歩くことにする。

 有馬温泉の太閤橋西側の交差点で横断歩道を渡り、有馬川沿いを延びる歩道を南東方向に進む。中の坊の前を抜けたポイントでマスクを外し、左手に向陽閣が見えたところで万年橋を渡って有馬川の東側に出て、急勾配の坂道を登る。

 右手の太閤の湯へのアクセス路をパスして、道なりに東方向に進む。突き当たって左方向に進むと右手に瑞宝寺公園の駐車場がある。毎年紅葉の季節にお世話になっている駐車場だ。駐車場の前を通過して歩道を北方向に進む。

 県道51号と芦有道路が繋がる交差点を、料金ゲートを右手に見ながら直進して県道51号に入り、宝塚方向に向かって右側の路側帯
(p1)を往く。県道51号は通過車両の数が比較的多く、結構なスピードで走る車もあるので気が抜けない。特に道路がカーブするポイントでは路側帯がほとんど無くなるので、間違っても走行車に「命預けます」の状態とならないように最善を尽くして歩く。

     
     
p1 県道51号の路側帯を歩く


 有馬温泉病院へのアクセス道路を右手にパスして松尾橋のバス停前を通過する。2分ほどで道路沿い左手に有馬斎場の表示柱
(p2)が見える。その向かい側の道路沿いに金属パイプを組み上げた通行止めゲート(p3)があり、その後方(南側)にさらに金網扉がある。

 ゲート
(p3)の東側(写真p3の黄色矢印 →)から突入し、迂回して金網扉の南側に入り込むと、南方向に向かって舗装された林道(p4)が延びている。

           
    
p2 有馬斎場の表示柱       p3 ゲートの東側から突入      p4 舗装された林道



【 林道を往く 】
 この林道の状態であれば、比較的容易に十八丁尾根の取付きにアクセスできるかも知れない・・。甘い期待は、ほんの3〜4分で裏切られる。林道は土砂と堆積した枯葉で覆われ、前方は倒木で塞がれる(p5)。ここは右手に大きく迂回して回避する。

 林道入口から10分弱で林道が右手に分岐するポイント
(p6)に出る。直進すると沢の方向に進むようだが、林道上に材木が横方向に意図的に置かれているようなので、ここは上り勾配になる右手に進む。

        
      
p6 倒木を回避する        p7 右手に進む


 2分ほど歩くと再び倒木で道を塞がれるが、ここは中央突破する。分岐から4分ほどで左手の木枝の間から巨大な砂防堰堤
(p7)が見えてくる。ここは右に迂回してヤブに入るのか・・?。

 辺りは枯葉が堆積して踏跡を見つけるのは難しいが、真新しい複数の赤リボン
(p8)が右方向への迂回路に誘導してくれる。ありがたい。堰堤の西側のヤブ状態のエリアを通過して再び林道に復帰するポイントには古いトラテープ(p9)が木幹に巻き付けられている。

            
      
p7 左手に砂防堰堤       p8 赤リボンに誘導されて     p9 林道復帰ポイントにトラテープ


 さらに大きな倒木をいくつか回避し、右手から延びている小さな沢筋を越えると、左手の沢が間近に迫って、白水峡から延びる山塊の白っぽい山肌が見えてくる。ここから林道は時計回りで西方向に大きくカーブしてから今度は南方向に延びていく。辺りはイノシシの寝床だらけで、周辺には相当な数のイノシシが棲息しているようだ。

 地形図からみて、そろそろ十八丁尾根への取付きが近いと判断して右手に注意しながら進むが、再び倒木に前方を塞がれる。ここは左手を抜けて回避すると、直ぐその先の右手に木枝に結ばれた新しい赤いリボン
(p10)を二つ見つける。ネット情報には「取付き付近には、やたらテープが巻かれている・・云々」の記事があったが、リボン二つだけとは・・。しかし、ありがたい。

    
    
p10 十八丁尾根の取付き 


 リボンの後方には堆積した落葉の上に踏跡らしい筋が延びており、右手前方には確かに上り勾配の斜面が存在する。
ここが十八丁尾根への取付き(標高500m辺り)であるのは間違いない。林道入口からなんと36分も費やしてしまった。



【 尾根を目指すが・・ 】
 二箇所目の赤リボン迄は踏跡を辿れたが、その後は厚く堆積した枯葉と倒木で、どこが踏跡かの判断ができなくなる。古い白テープを見つけるが却って混乱をきたしてしまい標高530〜540m辺りで完全に迷子状態になる。西側を眺めると、沢筋がしっかり存在するので尾根筋を目指して登っていることは確かだが・・。

 踏跡は標高600mの尾根近くまで登らないと見つからないだろうと判断して、正面に立ちふさがる急斜面を直登することにする。厚く落葉が堆積して足下は見にくいが、丁度掴みやすい太さの立木が散在しているので、これを掴んで体重を支えながら背中を丸めたサルのようなスタイルで恐ろしいほどの急勾配の斜面を登る。迷ったときの禁じ手 "ヤブ漕ぎ直登" を、この歳になっても使う羽目になるとは・・トホホである。

 10分ほどの悪戦苦闘を経て、尾根上に飛び出す手前で明瞭な踏跡
(p11)を見つける。(標高580〜590m辺りか) ここから踏跡を辿るが、滑ったらころがり落ちそうなとんでもない急勾配だ。ハアハアと肩で呼吸をする悲惨な状態になり、尾根に出たところ(p12)で一息入れる。ここで、つぶあん最中・チョコバーム・チョコピーナツと爽健美茶でエネルギー補給する。標高差で僅か100mを登るのに15分近くを費やしてしまった。

         
     
p11 明瞭な踏跡        p12 尾根上に出る



【 十八丁尾根を往く 】
 標高650m辺りの小ピークまで上がると、東側に白水山へ延びる尾根が連なり、北西方向には木枝の間から西宮市北部の流通センターの倉庫群、その左手に神戸市北区の藤原台や鹿ノ子台、右手に西宮北六甲台などの住宅街やマンション群が見える。尾根上にはしっかりした踏跡(p13)が残されていて迷うことはなさそうだ。

    
    
p13 尾根上の踏跡


 "十八丁尾根歩き" の前半の醍醐味は、強烈なアップ・ダウンと "岩稜越え" だろうか。南方向に延びる尾根道は、繰り返し巨大な露岩
(p14)によって行く手を阻まれる。

 左手(東側)に巻く
(p15)か、右手(西側)に迂回する(p16)か、岩塊の間を縫うように(p17)進むか、それとも四つん這いになって岩塊を乗り越えるかだが、自分で決める訳にはいかない。全ては "踏跡" まかせだ。

      
  
p14 尾根上の露岩     p15 左手に巻く    p16 右手に迂回   p17 露岩の間を縫う


 巻き道も中央突破も強烈なアップ・ダウンの繰り返しであり、しかも右か左に巻くときには、一方が必ず切れ落ちている(左に巻くときは左下が崖状になっている)のでスリル満点。この息を切らせながらの緊張感が、ジジイにとっても楽しいのだから不思議だ。

 左手眼下に芦有道路
(p18) が見えてくる頃、尾根道はササ道(p19)になり、少し歩きやすくなる。左下にトンネルに入る芦有道路が確認できてから西方向が開け、相変わらず存在感がある射場山とその左に灰形山が見える。

 再び木立に入ると、尾根が東方向に延びたポイントに出る。ここが標高718mの十八丁山
(p20)であるが、辺りに山頂であることを示す表示などは全く無い。標高650mで尾根道歩きを開始してから丁度50分である。

 十八丁山からは尾根道歩きの後半になる。緩やかに下ってから芦有道路
(p21)の西側に出る。芦有道路を左手横に眺めながら南方向に進んで、南側ガードレールの終端部の横を抜けてクマザサの山道に入る。


 
p18 芦有道路が見える   p19 ササ道になる    p20 十八丁山の山頂   p21 芦有道路の横を行く


 険しい一画
(p22)を通過してから長いササ道(p23)になる。西側に2/6に歩いた瑞宝寺谷西尾根(p24)が迫ってくる。

 クマザサは、ときに胸が隠れるくらいに深くなるが、足下にはしっかりした踏跡が続いている。いったんササ道が途切れて登り勾配が厳しくなる。"ヤブ漕ぎ直登" が影響したのか・・この辺りで腰に疲れが溜まってきていることを自覚するようになる。小ピーク
(p25)を越えて再び下る。
 
 
p22 意外に険しい一画   p23 長いササ道になる  p24 瑞宝寺谷西尾根    p25 小ピークを越える


 足下に残雪が現れ、正面に後鉢巻山
(p26)がはっきり見えてくる。突然、前方に白いガードレール(p27)が現れ、乗り越えると後鉢巻山北側の旧ドライブウェイ(p28)に飛び出す。標高650m辺りの尾根上で十八丁尾根歩きを開始してから1時間45分。十八丁尾根の取付きからは休憩時間を含めて2時間20分を要した。山中で遭遇したハイカーは無し。

 南方向には六甲最高峰のアンテナ塔が見え、振り返るとガードレールには赤ペンキで丸印が並べられている
(p29)。十八丁尾根を下山路に使う場合には、これが入口の目印になるようだ。


 
p26 後鉢巻山が見える  p27 白いガードレールが現れる p28 旧ドライブウェイに出る   p29 ガードレールに赤丸



【 エピローグ 】
 十八丁尾根の北側の約半分は、巨大な露岩がそこかしこに突き出した急峻な尾根を歩きます。尾根上の踏跡は明瞭ですが滑落の危険を伴うポイントもあり、慎重な行動が求められます。反面、適度なスリルと緊張感を楽しむことが出来ると思います。

 ルート上に道標は全く存在せず、現地では残置テープやリボンに頼ることになります。私と同様に地形図と方位磁石だけで山行を楽しむ皆さんは、事前に地形図を眺めながらルートを十分に検討しておくと少しは安心かも知れません。

 2023年2月9日現在、県道51号線沿いから十八丁尾根の取付きまでの林道が酷く荒れています。また十八丁尾根の取付き付近のエリアは倒木が多く、その上落葉が厚く堆積して踏跡が見にくくなっており、慎重なルート探索が必要です。

 今回の山行では、真新しい赤色リボンが絶妙なポイントに置かれていて救われました。ルートの維持に尽力されている皆さんに心から感謝します。


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