裏六甲 瑞宝寺谷(兵庫県神戸市) ルートMAP |
【 山行日時/ルート 】 日時:2023年2月14(火) 天候:曇り、時々乾雪 ルート: 瑞宝寺パーキング → 太鼓滝 → 瑞宝寺谷道入口 → 鋼管堰堤 → 第四堰堤 10:17 10:32 10:45 10:52 11:05 → 第六堰堤 → 鉄パイプ仮設橋 → 東側砂防壁 → 六甲ドライブウェイ 11:17 11:31 11:43 12:04 総時間(ルート探索・休憩等の時間を含む) : 1時間47分 【 プロローグ 】 瑞宝寺谷西尾根を登った2/6、六甲ドライブウェイを石宝殿に向かう途中で左手の道路脇に "瑞宝寺谷道 有馬へ3.1k" と表示した私製の道標(p1)が木幹に留められているのに気がついた。道標の南側には確かに雪を被った登山道(p2)が谷側に延びており、新しくはないものの雪上に足跡も残されていた。「瑞宝寺谷を登り詰めると此処に出るのか。道標があるコースだったらジジイでも歩けるかも知れない・・」。ぼんやりとそう思った。 p1 瑞宝寺谷道への道標 p2 谷側へ向かう登山道 昭文社の山と高原地図「六甲・摩耶」編(2021年版)を眺めると "瑞宝寺谷道" は、赤い太線の正規ルートではなくマイーナールートを意味する黒い細線で表示され、射場山の西側で筆屋道から分岐した後、瑞宝寺谷沿いを六甲越北側のドライブウェイまで延びている。ネット情報では「良く整備された・・」コースの由で「楽しいアドベンチャーコース」と形容しているハイカーさんもいるようだ。 「冬型で強い北西風が吹くも降水確率はゼロ」の予報が出ている 2/14 にこの瑞宝寺谷道を歩いてみることにした。 【 瑞宝寺公園 → (筆屋道)→ 瑞宝寺谷道入口 】 瑞宝寺公園から1kmほど北側にある有馬温泉瑞宝寺パーキング(ウィークデイは一日最大600円)に車を駐めて、冷たい西風を受けながら瑞宝寺公園に向かう。10分弱で公園入口(p3)に到着。公園には綺麗にメインテされた水洗トイレが併設されている。公園内を南方向に進み「癒しの森方面→」の標識(p4)で右に分岐してから南側の沢(有馬川の上流)に降りる。 飛び石伝いに沢を渡って(p5)、沢の左岸(西岸)に延びる山道を南方向に進む。直ぐに左手から水音が聞こえ、沢に降りると南側に小さな滝(p6)がある。八日振りの太鼓滝だ。雨が降ったので水量は 2/6 に比べてかなり多いようだ。 p3 瑞宝寺公園の入口 p4 癒しの森への道標 p5 沢を渡る p6 太鼓滝 再び左岸道に戻って南方向に進み、左手の古い堰堤を越えてから沢に降りる。岩伝いに沢を横断して右岸(東岸)に渡り(p7)、今度は右岸を往く。右手に堰堤を二つ眺めてから右岸道の雰囲気の良い一画を(p8)を抜ける。 太鼓滝から12分ほど歩いたところで、左手に木材を使って組み上げられた「六甲の森林」という表題の解説板(p9)が現れる。ネット情報によると、この解説板の横が瑞宝寺谷道の入口のはずだ。ところが、とんでもないことにこの入口を塞ぐようにロープが張られて「この先危険! この先は、登山道ではありません」と記載した掲示物(p10)がロープに掛けられている。どうやら有馬警察署、有馬町自治協議会、兵庫県山岳連盟の三者連名による警告表示のようだ。 p7 沢を渡って右岸(東岸)へ p8 右岸を往く p9 瑞宝寺谷道の入口 p10 警告表示 "エライこっちゃ・・" と一瞬たじろぐも、通行不可とか通行禁止とは書かれていない。これは単に「危険だぞ」という警告であって、事故が起きたら「それみたことか、ちゃんと警告したのに・・」とやられるんだろう・・。ここは "自己責任" であることを覚悟して瑞宝寺谷道へ突入です。 【 瑞宝寺谷道を往く 】 まずは黄と赤のテープに誘導され、踏跡と呼ぶには失礼な感じがする立派な山道(p11)を歩いて瑞宝寺谷の右岸(東岸)を往く。右手に古い堰堤を眺めながら歩いていると、前方で突然、ドドドッという物音がする。イノシシ出現かと思って大声を出してみるが反応がない。どうやら落石らしい。左手の斜面から落ちたようだ。警告表示を軽視した祟りなのかも。危ない、危ない・・。 堰堤を越えてダム内に降りると前方に巨大な鋼管堰堤(p12)が現れる。近づくと櫛状に並んだ鋼管の礎石の右端に木製の梯子(はしご)が見える。沢を渡ってさらに近づくと、丸太を針金で縛って組み上げた梯子(p13)だ。ヤワそうだが触れてもビクともしない頑丈さだ。梯子を登って礎石に上がり、鋼管の隙間を抜けて堰堤の南側に出る。 p11 テープに誘導されて山道へ p12 鋼管堰堤が現れる p13 梯子を登って南側へ 西方向に延びる踏み跡を辿ると、今度は左岸(西岸)を延びている良く踏まれた山道(p14)になる。ここで怪しい雪雲が覆っていた空からいよいよ白いものが落ちてくる。霰(あられ)かな・・ と一瞬思ったが、霰よりもはるかに小さい白い粒がまるで雨のように降ってくる。 古い堰堤を二つ越え、さらに二段堰堤を越えてから東方向に沢を渡って石段道(p15)を登り、今度は右岸(東岸)を往く。 前方に大きな堰堤(p16)が現れる。これを高巻くためか左手に急勾配の山道(p17)が延びている。右手にしっかりした補助ロープが設けられており、下りの場合は助けになりそうだ。 p14 明瞭な踏跡 p15 右岸(東岸)に渡る p16 大きな堰堤が出現 p17 急勾配の山道 堰堤上に上がって表示板(p18)を確認すると、昭和56年(1981年)に完成した瑞宝寺第四堰堤だという。竣工後すでに40年以上が経過しているがダムの内側を眺めると、土砂の堆積量は非常に少なく、治山対策はうまくいっているようだ。 新雪が薄く積もり右手が崖になった一画を通過してからロープの助けを借りてダム内に降りる。沢を西方向に渡り、急傾斜のロープ場(p19)を這い上がり、今度は新雪を被った左岸道(p20)を往く。 p18 第四堰堤の表示板 p19 急勾配のロープ場 p20 新雪の左岸(西岸)道 左手に古い堰堤を二つパスすると、規模の大きい比較的新しい堰堤(p21)が左手に現れる。ダム壁に埋め込まれたプレートの記載を確認すると、平成11年完成の瑞宝寺第六堰堤で、長さが約60m、高さが14.5mという大堰堤だ。 第六堰堤を越えたところで山道が崩落しており、例の丸太造りの梯子(p22)が掛けられている。下から4段目と5段目の横方向の丸太が破断しているが、丸太の残骸は縦方向の丸太に針金でしっかり固定されている。強度を確かめると十分に脚を乗せられるようなので、ここは、それ行けドンドンだ。 p21 瑞宝寺谷第六堰堤 p22 丸太造りの梯子 梯子を上がると左岸道は幅広の立派な山道になり、左手に古い二段堰堤をパスする。いつの間にか雪が止んで北の空が青ずんでくる。 左手に大型の堰堤を二つパスする。右手の斜面から転がり落ちた岩塊が散在する一画を抜けて再び大きな堰堤を越えると、堰堤脇の崩落箇所に今度は金属パイプ4本を並べたいかにも "手造り" 風味の橋(p23)が架けられている。軽く脚を載せて強度を確認してみるとビクともしない。木材を固定した手摺りも頑丈で全く動かない。 手造りの橋を渡ると、今度は左手が崖になった一画(p24)に丸太で組んだ防護柵が設けられている。本当にありがたい。このとき突然、周囲が明るくなる。今日初めて瑞宝寺谷に陽光が差し込んだようだ。 石積型の古い二段堰堤を越えると、山道はダム内を横断して右岸(東岸)に移り(p25)、石段道を登る。 p23 金属パイプの橋 p24 左岸道の防護柵 p25 右岸(東岸)に移動 コンクリートタイプの古い堰堤が見えてきて、右岸道が堰堤を越えるポイントにまた丸太造りの梯子(p26)が掛けられている。しかし、今度は無残にも原型を留めないくらいに壊れている。残骸部分の強度を確かめてみるとグラグラだ。左手にお助けトラロープが木枝に結ばれているので、このロープの助けを借りて堰堤上によじ登る。 右岸道は左手に向かい、コンクリート製の砂防壁に沿って南方向に延びている(p27)。右岸道はさらに石段を登り、右手に現れた堰堤の上を左岸側に少し進んでから、金属製の小さな梯子でダム内に降りる(p28)。近くに壊れた木製の梯子の残骸が置かれている。 p26 壊れた梯子とロープ p27 砂防壁に沿って進む p28 金属梯子でダム内へ いよいよ谷は狭くなり、主稜線が近づいているのが分かる。次は前方に現れた古いコンクリート製の堰堤を左岸側から越えることになるが右手は急斜面だ。斜面上にある一本の木に長いロープが結ばれて斜面の下まで降りてきている(p29)。このロープの助けを借りて急斜面を登り切って堰堤の西端を越える。 p29 ロープ場の急斜面を登る 谷の奥へ向かって詰めるように並んでいる複数の小さな堰堤を前方左手に眺めながら山道(p30)を登ると、長いロープが垂れてアルミ製の梯子が置かれた急斜面(p31)に出る。梯子はしっかり固定されていて不安はない。登り切ると、急斜面がさらに続いており、再びロープと梯子が設置されている(p32)。左手が崩落した崖状になっているので慎重に登る。さらに急勾配の階段道を登り切ると、よく踏まれたササ道(p33)になる。 p30 堰堤横の山道を往く p31 ロープと梯子の急斜面 p32 急斜面が続く p33 ラストはササ道 そのまま道なりに進むと左手に私製の道標(p34)があり、瑞宝寺谷道の出口(p35)から薄く新雪が積もった六甲ドライブウェイ(p36)に飛び出す。瑞宝寺谷道の入口から約1時間20分。ルート上で遭遇したハイカーは無し。 p34 瑞宝寺谷道への道標 p35 瑞宝寺谷道の出口 p36 六甲ドライブウェイ 【 エピローグ 】 ネットの噂(うわさ)どおり、ほんの少しアクロバット的な "面白い" ルートです。出口(下山の場合は入口)以外に道標は存在しませんが、道は良く踏まれて明瞭で維持整備も行われています。自力突破が難しいポイントでは、ロープや梯子などの "お助けツール" が必ず提供され、ツールのメインテ(維持整備)も確実に行われているようです。 瑞宝寺谷道の入口に「この先は、登山道ではありません」と記載した警告表示がありましたが、確かにこれは登山道ではなく、砂防堰堤などの監視・巡視に供することを意図した道なのだろうと個人的に推察しました。このルートを登山愛好者に開放し、メインテも続けてくれている心ある皆さんに心から感謝します。 今回の山行で瑞宝寺谷だけでも大小合わせて20を遙かに超える砂防堰堤が存在して、有馬温泉エリアが土砂災害から守られていることを初めて知りました。治山・治水の大切さを改めて認識する意味でもこのルートを歩く価値はあると思います。 Top Page |