懲りない班目(まだらめ)委員長のデタラメ?(東日本大震災)
                                  
   2011.4.20
 
 



10年・・20年は、住めない・・ 

東京電力は参議院予算委員会で清水正孝社長が参考人として質問を受ける前日の4月17日になって漸く原発事故収束に向けての工程表を示し、放射線量を十分に低減して安定した状態とするまでの期間を6〜9ケ月と見込んでいる旨、発表した。ところが、海江田経産相は同日の記者会見で、避難住民の帰宅時期について「6〜9ケ月後を目標に一部地域で帰宅が可能か否か知らせたい」(4/18付読売新聞)と述べ、帰宅時期を明言しないどころか「帰れないケースもある」との認識を示した。放射源自体からの放射性物質の放出量を大幅に低減し安定した状態にできれば、大気中の放射線量は地域を問わずに低減するはずであり、原発に極端に近接した地域を除けばどの地域の避難民も帰宅できるはずだが、海江田経産相のこの言葉は、そのような状態になっても「特定の地域では、帰れない場合がある」ということを示唆していると解釈できる。松本健一内閣官房参与が言ったという「10年、20年住めない」地域が現実に存在するという認識を経産大臣自身が持っているということだ。

専門家による土壌汚染の指摘と安全委の反論

3週間ほど前になるが、国際原子力機関(IAEA)は3月30日にウィーンで記者会見し、IAEAが独自の土壌調査を行って、福島第一原発から北西40kmに位置する飯舘村で、土壌表面から1平方メートルあたりIAEAの避難基準の2倍にあたる2000万ベクレルに達する放射性ヨウ素131を検出したと発表し、住民は「避難の必要がある」との見解を示した。ところが、報道を賑わしたとおり、内閣府の原子力安全委員会(班目春樹委員長)は、IAEAとは「判断基準が違う。日本の方が総合的に判断しており問題ない」・・「日本は土壌を深さ約5cmまで掘り、採取した土壌1kgあたりの放射性物質濃度を調べている。このほか、空気中の放射線量の割合、空気中のほこりや飲食物に含まれる放射性濃度なども測定し、人への影響を考慮している」(4/1付読売新聞)と述べて「避難の必要はない」と強硬に反論した。


 班目委員長の証言どおり3月20日に文部科学省が飯舘村の土壌調査を行っており、土壌1kg当たり放射性のヨウ素131を117万ベクレル、セシウム137を16万3000ベクレル検出している。ところが、3月28日付の京都新聞は、京都大学の今中哲ニ助教(原子炉工学)が上記のセシウム137の検出値に基づいて土壌を評価した結果(http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20110328000068)を報告している[本文末に記事を再掲]。この報告によれば、汚染土を表面2cmの土と仮定すると飯舘村の土壌の汚染度は、1平方メートル当たり326万ベクレルで、チェルノブイリ原発事故で旧ソ連が住民を強制移住させたときの基準値である148万ベクレルの2倍超であったという。

 これに加えて3月25日付のサイエンス誌(米国)の電子版は、米国アルゴンヌ国立研究所の技術者チェン氏の評価結果(http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/03/japan-soil-measurements-surprisingly.html?rss=1)を報告している[本文末に記事を再掲]。チェン氏は、前述の今中助教と同じく汚染土が深さ2cmまでと仮定し、1kg当たり16万3000ベクレルは、概算で1平方メートル当たり800万ベクレルに相当するとし、チェルノブイリ近郊の村で検出されたセシウム137の濃度は、最高でも500万ベクレルだったと述べている。さらに土壌1kg当たり16万3000ベクレルの汚染土の上に立っている人間は、概算で年間150ミリシーベルトの放射線を受けることになり、米国環境保全局(US EPA)の避難基準である年間50ミリシーベルトを超えてしまうという。つまり、今中助教やチェン氏の試算が正しいとすると、飯舘村の土壌汚染はチェルノブイリで強制移住の対象となった地域よりも深刻であり、「10年、20年住めない・・」が現実の話になってしまうということになる。


不可解な突然の避難指示

不思議なことに、政府は原子力安全委員会や原子力安全・保安院が「避難する必要は無い」と主張してきたこの飯舘村を含む原発から30km超圏にある5市町村を、4月12日になって突然「計画的避難区域」に指定し、同区域内の住民に対して1ケ月以内に避難するよう指示した。この避難指示は原子力安全委員会の見解に基づくものであるという。ところが、原子力安全委は、その前日まで米国環境保全局の基準と同じ年間累積で50ミリシーベルトを避難基準としていたのである。原子力安全委は理由を何ら説明しないまま、避難基準を国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告値である年間20ミリシーベルトに突然置き換えてしまったのである。そして、原発事故の収束が長期化する見込みであり、累積の放射線量がこの年間20ミリシーベルトの基準を超える可能性があるからだと避難指示の根拠を説明した。


土壌汚染問題の組織的隠蔽?

福島第一原発の事故が発生して以来、事故の当事者である東電幹部、政府、原子力安全委員会、経産省(原子力安全・保安院)は、事故の発生とその拡大の原因は、想定外の事象が次々と発生したためだとして、ひたすら自らの責任の回避を図ってきた。3月27日付のこのコラムで取り上げたSPEEDIの一件からも分かるように、斑目委員長以下、原子力安全委のメンバーは、自らの判断や行動の誤りに対して責任追及されることを執拗に、そして巧みに回避してきた。IAEAによる飯舘村の土壌汚染の指摘に対しても、計測方法など判断基準の違いを持ち出して責任を回避しようとしてきた。4月12日の突然の避難指示は、土壌汚染が国際的にも問題視される深刻なレベルにあることを、原子力安全委として認識したことを端的に示しているように思う。委員会としての責任を問われる前に避難指示を出しておく。しかも、その理由を土壌汚染ではなく、大気中の放射線量が避難基準を超える可能性があるからだとすれば、土壌汚染に対する原子力安全委の過去の判断誤りに言及する必要もない。


 3月31日付のニューヨークタイムス紙は、飯舘村のセシウム137による土壌汚染はチェルノブイリ原発周辺で居住禁止が宣言された区域の汚染度のおよそ2倍であることを指摘し、住民の避難と併せて、土壌表面のセシウム137の粒子が土壌中に拡散する前に、早急に土壌に対して除染処置を行うべきだとする専門家の意見を伝えている。(http://www.nytimes.com/2011/04/01/world/asia/01clean.html?_r=3&ref=world

私は、内閣官房内部では「10年、20年住めない・・」が当然のことのように語られていて、それが故に松本健一内閣官房参与の口からこの言葉が不用意にメディアに露出したように思われてならない。前述の一部のメディアが報道した専門家の考えが正しく、しかも原子力安全委や政府(内閣官房、経産省)がそれを認識していながら意図的にかつ組織的に隠蔽しているとすれば、被災者や国民に対する許しがたい裏切りである。しかもこの隠蔽によって土壌に対する除染処置の絶好の機会を失うことになれば、取り返しがつかないことになる。



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京都新聞(3/28)

土壌汚染「チェルノブイリ強制移住」以上 京大助教試算

東京電力福島第1原発の事故で、高濃度の放射性物質が土壌などから確認された福島県飯館村の汚染レベルが、チェルノブイリ原発事故による強制移住レベルを超えているとの試算を、京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子炉工学)がまとめた。

飯館村は原発から北西約40キロ。今中助教は、原発の状況が分からず被災地各自の事情もあるとした上で「避難を考えた方がいいレベルの汚染。ヨウ素やセシウム以外の放射性物質も調べる必要がある」として、飯館村で土壌汚染を調査する方針だ。

文部科学省の調査で20日に採取した土壌から放射性のヨウ素1キログラム当たり117万ベクレル、セシウム16万3千ベクレル、雑草からヨウ素254万ベクレル、セシウム265万ベクレルが確認された。土壌中のセシウムは通常の1600倍以上だった。

今中助教は、土壌のセシウムで汚染の程度を評価した。汚染土を表面2センチの土と仮定すると1平方メートル当たり326万ベクレルで、1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故で強制移住対象とした148万ベクレルの2倍超、90年にベラルーシが決めた移住対象レベルの55万5千ベクレルの約6倍だった。

今中助教は「国は原発周辺の放射性物質を詳細に調べて分析し、ただちにデータを公開すべきだ」と話している。セシウムは半減期がヨウ素(8日)と比べ30年と長く、汚染の長期化が懸念されている。

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Science誌 電子版
Japan Soil Measurements Surprisingly High

on 25 March 2011, 6:14 PM

Concerns about radiation in Japan have now spread to the soil surrounding the crippled Fukushima Daiichi nuclear reactor. One level that was reported this week was high enough to suggest people in that area should be evacuated, an expert says. But he cautions that it's hard to draw conclusions about these spot measurements without more data.

Today, Japanese officials told the population living up to 30 kilometers from the plant that they should consider leaving the area, expanding the previous 20-kilometer radius evacuation zone. But according to news report, the advice stems from difficulties in supplying the region with food and water, not radiation levels.

Meanwhile, on Wednesday the Japanese science ministry began to report measurements of cesium-137 in upland soil around the plant. The levels are highest from two points northeast of the plant, ranging from 8690 becquerels/kilogram to a high of 163,000 Bq/kg measured on 20 March from a point in Iitate about 40 kilometers northwest of the Fukushima plant.

The soil measurements are more significant for evacuation purposes than radioactivity in the air, says nuclear engineer Shih-Yew Chen of Argonne National Laboratory in Illinois, because cesium dust stays underfoot while air is transient. Levels of cesium-137 are also more important than soil readings of iodine-131, which is short-lived and more of a concern in milk and vegetables. "It's the cesium that would prompt an evacuation," says Chen.

Based on a rough estimate, a person standing on soil with 163,000 Bq/kg of cesium-137 would receive about 150 millisieverts per year of radiation, says Chen. This is well above the U.S. Environmental Protection Agency standard of 50 millisieverts per year for an evacuation. (Per day, it's 0.41 millisieverts, which is equivalent to four chest x-rays.) But Chen adds, "one point [of data] doesn't mean that much."

The hot spot is similar to levels found in some areas affected by the 1986 Chernobyl nuclear reactor accident in the former Soviet Union. Assuming the radiation is no more than 2 centimeters deep, Chen calculates that 163,000 Bq/kg is roughly equivalent to 8 million Bq/m2. The highest cesium-137 levels in some villages near Chernobyl were 5 million Bq/m2.

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